ピアノを綺麗にミックスする方法
ピアノは音域の広さとダイナミックレンジの広さから、ミックスするのが難しい楽器の一つとして分類されます。
ソロピアノではない場合には、ミックスに移る前にどの音域にピアノを配置するかを決定して、他の楽器との音被りを回避するようにボイシングを組み立てる必要があります。
今回はポップミュージックのような多くの楽器を使用している環境で、ピアノを綺麗にミックスする方法についてご紹介します。
ピアノ音源の品質が重要
ピアノの生演奏をマイク録音するのは大掛かりになる為、自身の楽曲にピアノを使用する場合には、ほとんどがVSTプラグインのようなデジタルインストゥルメンタルを使用することになるかと思います。
この時のプラグイン品質が最終的なクオリティに直結する為、ミックスで改善することよりも、そもそものピアノ音源のクオリティを上げることは非常に重要です。
高品質なピアノを選んだら、演奏を打ち込み、必要であればMIDIデータをクリーンアップします。この段階では間違った音と演奏タイミングの修正を行います。
さらにベロシティ値をコントロールして、生演奏のようなリアルな質感に近づけます。優れたピアノプラグインは大、中、小とさまざまなヒット音をコントロールして録音することができます。
→ピアノ打ち込みをよりリアルに近づける方法【DTM】
ピアノのイコライザー設定
88キーのピアノが持つ広い音域をイコライザーだけで処理するのは非常に難しい為、冒頭に述べたようにミックス内の正しい音域に配置することが重要です。
ソロピアノの場合は特定の音域を積極的にブースト&カットできますが、ピアノがアレンジメントの一部である場合は、他の楽器と被らないように、不要な周波数をカットすることに重点を置きます。
通常はハイパスフィルターを使用して30~50Hz未満の周波数帯域を取り除き、ピアノが高い音域で演奏される場合には約100Hzくらいまで上げることができる場合もあります。
ピアノの音が濁って聞こえる場合には、Q幅の広いEQで約200~300Hzをカットしてみてください。反対にピアノの音が軽く、ボトム感が不足している場合は約100Hz~200Hzの間でブーストしてみてください。
明るさとエアー感を追加したい場合は15kHz前後の高いシェルフブーストを使用します。
→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
コンプレッサーの必要性
正しくMIDIデータをクリーンアップし、高品質なピアノプラグインを使用している場合にはピアノトラックで多くのコンプレッションを行う必要はないです。
もちろんフリー音源やサンプリング音源、またはピアノの生演奏を使用している場合には、コンプレッサーが役立ちます。また、ロックやポップなどのより現代のアグレッシブなジャンルでは、意図的に過度に圧縮された音源を使用することもあるので、コンプレッサーが必要かどうかはどのようなサウンドを求めているかによります。
クラッシックスタイルのようなパフォーマンスに大きく依存するピアノでは、穏やかなレガートアルペジオから鍵盤を叩きつけるようなコード弾きまで瞬時にダイナミクスが変化するものもあります。
このような大きなダイナミックレンジがパフォーマンスの一部となっている音源でコンプレッサーを使用するのは間違いです。
ピアノのコンプレッサー設定
現代的なポップソングの伴奏としてピアノを使用する場合は、一貫した音量感をキープする必要があるのでコンプレッサーが効果的です。
それでもピアノはトランジェントが重要な楽器なので、音の立ち上がりを潰すかどうかは慎重に判断する必要があります。
おすすめはTube-STAやLA-2Aスタイルのコンプレッサーのような優しいものを使用するか、デジタルコンプの場合は4:1くらいのレシオ値を使い、アタックとリリースで慎重にコントロールします。
他にも楽器があり、伴奏ポジションで使用する場合は、3〜5dBくらいのゲインリダクションで速いアタックと遅いリリースで4:1のレシオくらいを目安に圧縮してみてください。
鍵盤のアタック感が少しカットされますが、ミックス内で少し引っ込んだバッキングポジションで自然に鳴り響きます。
自分の耳で確認しながら調節することを忘れないようにしましょう。
→コンプレッサーの基本的な使い方
ピアノのリバーブ設定
ピアノとリバーブの相性は抜群です。上品なリバーブをピアノに追加することで、さらに壮大で豊かなサウンドにすることが可能です。
ピアノのVSTプラグインにはリバーブが組み込まれていることがほとんどですが、スタンドアローンのリバーブプラグインよりも劣ることが多いので、別途で高品質なプラグインを所持している場合はそちらを使用しましょう。
→リバーブVSTプラグインおすすめ7選【DTM】
クラシックのようなジャンルでは、「ホールリバーブ」のような音場の広いリバーブを使用することでコンサートホールのような響きが得られます。
ポップスやロック系のジャンルではリバーブを少なめにして、ミックス全体で濁らないように配慮しましょう。
ピアノのパンニング
ソロピアノをミキシングする場合は、中央にパンする必要があります。
一般的にピアノは低音が左手側にあり、高音は右手側にある為、左右を反転させたピアノトラックを複製するというテクニックを使用されることが多いです。
またMIDIデータのパンニング設定を低音を中央に、高音になるにつれて左右に広げるといった配置にすることで、より音像の広い豊かなピアノトラックが入手できます。
ピアノプラグインによってはこういった機能が含まれていることもあるので、お手持ちのピアノ音源で確認してみてください。
まとめ
ソロピアノをミックスする場合は、今回の内容を適用しながら、好みに合わせてミキシングすることをおすすめします。この場合のミックスの最終目標はピアノをできるだけ大きく、フルレンジで鳴らすことです。
一方でピアノを他の楽器と馴染ませる場合は、少し控えめにする必要があります。より多くのコンプレッション、住み分けの為のEQ、そして少ないリバーブで濁りを避けるようにしてください。
ピアノが音響空間を占有しすぎる可能性があるので、ステレオイメージを広げることも間違っている可能性があります。
ソロのピアノトラックでは無い場合には、常に楽曲全体を素晴らしいサウンドにすることを忘れないでください。
以上、「ピアノを綺麗にミックスする方法」でした。
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