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ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTMの定番テクニック】

ストリングスを綺麗にミックスする方法

ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTMの定番テクニック】

ストリングスは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスといった弦楽器群、またはそれらが重なり合って奏でる豊かな音色や演奏そのものを指します。オーケストラの中核を成すだけでなく、ポップス、ロック、劇伴音楽など、様々なジャンルで楽曲に華やかさ、壮大さ、そして深い情感を加えるために用いられます。

しかし、その魅力的なサウンドゆえに、ミックスにおいてはいくつかの課題も抱えています。広い音域をカバーするため他の楽器と干渉しやすかったり、ダイナミクスレンジが広いために埋もれたり逆に突出したりしがちです。特に複数のストリングスパートをレイヤー(重ねる)する場合や、他の楽器との間でマスキング(音の被り)を避け、自然に馴染ませるには、いくつかのテクニックと経験が必要です。

そこで今回は、DTM(デスクトップミュージック)におけるストリングスを、より美しく、効果的に響かせるためのミックス方法について、基本的な考え方から具体的なテクニックまで詳しくご紹介します。

ストリングスのミックスが難しい理由とは?

ストリングスを楽曲内で効果的に響かせることが難しいとされる主な理由は、以下の点が挙げられます。

  • 広大な周波数帯域: ヴァイオリンの高音域からコントラバスの低音域まで、ストリングスセクション全体では非常に広い周波数レンジをカバーします。これが他の楽器の帯域と衝突しやすく、ミックス全体の濁りの原因となります。
  • 広いダイナミクスレンジ: ピアニッシモ(非常に弱く)からフォルテッシモ(非常に強く)まで、表現の幅が非常に広いです。特に生演奏やそれを模した音源では、このダイナミクスのコントロールが難しく、小さな音は埋もれ、大きな音は他のパートを邪魔してしまうことがあります。
  • 豊かな倍音構成: 弦楽器特有の豊かな倍音が、サウンドに厚みと暖かみを与える一方で、処理を誤ると特定の周波数が強調されすぎ、耳障りな響きになることがあります。
  • 打ち込み特有の課題: ソフトウェア音源を使用する場合、ベロシティやエクスプレッションだけでは生演奏のような自然な抑揚やアーティキュレーション(奏法による表情)を再現するのが難しく、機械的なサウンドになりがちです。

具体的には、ヴァイオリンやヴィオラなどの高音域を担当する楽器では、耳に鋭く刺さるようなピーク(特定の周波数の突出)が発生することがあります。逆に、チェロやコントラバスといった低音域を担当する楽器では、低域が過剰になり(ブーミーな状態)、ミックス全体が濁ってしまう可能性があります。

これらの問題を解決し、ストリングスを楽曲に美しく溶け込ませるためには、EQ(イコライザー)による周波数バランスの調整と、コンプレッサーによるダイナミクスの整理が基本的ながら非常に重要なプロセスとなります。

ストリングスのEQ(イコライザー)処理

ストリングスのミックスにおける最初のステップは、EQを用いて周波数特性を整えることです。まず、ミックス全体の中でストリングスがどの帯域を担当し、どこに配置したいのかを明確にイメージしましょう。そして、他の楽器との周波数的な衝突(マスキング)を避け、各パートがクリアに聴こえるようにイコライザープラグインを使って丁寧にEQ処理を施します。

処理方法は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスといった個別の楽器トラックなのか、それらがまとまったアンサンブル(セクション)トラックなのかによって大きく異なります。ここでは、多くのケースで応用しやすいように、主に高音域を担当するストリングス(ヴァイオリン、ヴィオラなど)と、主に低音域を担当するストリングス(チェロ、コントラバスなど)に分けて、基本的なEQ処理の考え方を解説します。

高音担当ストリングス(ヴァイオリン、ヴィオラなど)のEQ処理
高音ストリングスのEQ処理イメージ

高音域を担当するストリングス(ヴァイオリンやヴィオラ)のミックスでは、まず不要な低域成分を取り除くことから始めます。多くの場合、楽器本来の響きに影響を与えない、空調ノイズや他の楽器からの低周波のかぶりなどが含まれているため、約80Hz以下の帯域をハイパスフィルター(ローカット)でカットします。これにより、ミックス全体の低域の濁りを防ぎ、スッキリとしたサウンドになります。

次に、楽器の「胴鳴り」や存在感を少し加えたい場合、100Hzから150Hzあたりを狭いQ幅(ピンポイント)でわずかにブーストすると、どっしりとした安定感が得られることがあります。ただし、ブーストしすぎると不自然になるので注意が必要です。

中低域、特に200Hzから300Hz周辺は、ボーカルや他の楽器(ギター、スネアなど)の基音や倍音が集まりやすい帯域です。ストリングスがこの帯域で膨らんでいると、ミックスが混雑し、濁って聴こえがちです。この帯域を少しカット(シェルビングまたはピーキングEQで)することで、他のパートとの分離が良くなり、クリアな印象になります。

サウンドの「太さ」や「暖かみ」が足りないと感じる場合、350Hzから500Hz付近を広いQ幅で緩やかにブーストすると効果的な場合があります。ただし、この帯域はボーカルや他のメロディ楽器の重要な成分が含まれていることも多いため、他のトラックとの兼ね合いをよく聴きながら慎重に調整してください。マスキングを起こさないよう、必要であれば他のトラック側でこの帯域を少しカットすることも検討しましょう。

高音域のストリングスは、弓が弦を擦る際のアタック音や倍音成分により、特定の周波数で耳障りなピークが発生しやすい傾向があります。特に2.5kHz、4kHz~5kHz、7kHz付近に鋭い共鳴(レゾナンス)が現れることがあります。これらのピークは、EQで該当箇所を探し出し(EQスウィープ)、非常に狭いQ幅でピンポイントにカットすることで、耳障りな響きを抑えることができます。カットしすぎるとサウンドが痩せてしまうので、必要最小限に留めるのがコツです。

低音担当ストリングス(チェロ、コントラバスなど)のEQ処理

低音域を担当するストリングス(チェロやコントラバス)の場合、高音担当とは逆のアプローチや、異なる帯域への配慮が必要になります。

こちらも同様に、不要な超低域成分を取り除くため、約40Hz~80Hz(楽器や役割による)以下をハイパスフィルターでカットします。コントラバスなどはより低い周波数まで再生しますが、ミックス全体のバランスを見て、キックやベースとの干渉を避ける範囲で調整します。

中低域、特に100Hzから250Hz付近は、ベースギターやキックドラムの胴鳴りなどと衝突しやすい帯域です。ストリングスがこの帯域で過剰になっていると、低域全体が飽和し、輪郭がぼやけてしまいます。必要に応じてこの帯域をカットし、他の低音楽器のためのスペースを確保します。

低音ストリングスがミックスの中で埋もれず、しっかりと聴こえるようにするには、その楽器の「輪郭」や「弦の質感」を強調する中高域~高域の調整が効果的です。例えば、1kHzから6kHzあたりをターゲットに、EQスウィープ(特定の周波数をブーストしたまま左右に動かし、効果的なポイントを探す手法)を行い、最もサウンドが明瞭になる、または存在感が増すポイントを見つけます。

EQスウィープのイメージ

さらに存在感や空気感を加えたい場合は、6kHzから8kHz付近をハイシェルビングEQでわずかにブーストすると、弦の擦れる音や高次倍音が強調され、サウンドが前面に出てくることがあります。

【重要】EQの注意点: 上記で紹介した周波数や設定値は、あくまで一般的な目安です。最適なEQ設定は、使用する音源、楽曲のアレンジ、他の楽器との兼ね合いなど、様々な要因によって大きく変化します。必ず自身の耳でサウンドを注意深く聴きながら、カット/ブーストの効果を確認し、微調整を行うようにしてください。また、過度なブーストは位相ずれを引き起こし、サウンドを不自然にする可能性もあるため、基本的にはカット主体で処理を進めるのが安全です。


ストリングスのコンプレッサー処理

EQ処理で周波数バランスを整えたら、次はコンプレッサーを使ってダイナミクス(音量の大小の幅)をコントロールします。ストリングスは演奏表現によって音量が大きく変動するため、コンプレッサーで音量のピーク(突出した部分)を抑え、全体の音量感をある程度均一に保つことが主な目的です。これにより、小さな音が埋もれるのを防ぎ、大きな音が他のパートを邪魔するのを抑制し、ミックスの中で意図した音量レベルに安定して配置しやすくなります。

ただし、コンプレッションをかけすぎると、ストリングス本来のダイナミックな表現力や繊細なニュアンスが失われ、のっぺりとした不自然なサウンドになってしまう危険性があります。特にクラシック系のストリングスなど、ダイナミクスが音楽表現の重要な要素である場合は、慎重な設定が求められます。あくまで「整える」意識で、過剰な圧縮は避けることが重要です。

ストリングスのコンプレッサー設定の考え方
コンプレッサーのパラメータ

コンプレッサーの基本的なパラメータ設定の考え方は以下の通りです。

  • スレッショルド (Threshold): コンプレッサーが動作を開始する音量レベルを設定します。ストリングスの平均的な音量より少し上のレベル、つまり音量が大きい部分(ピーク)だけにかかるように設定するのが一般的です。ゲインリダクションメーターを見ながら、ピーク時に反応するように調整します。
  • レシオ (Ratio): スレッショルドを超えた音をどれくらいの比率で圧縮するかを設定します。ストリングスの自然なダイナミクスをあまり損ないたくない場合は、2:1から4:1程度の低いレシオから試してみましょう。よりしっかりとピークを抑えたい場合は、少し高めのレシオ(例: 5:1以上)を設定しますが、かけすぎには注意が必要です。
  • アタックタイム (Attack Time): 音量がスレッショルドを超えてから、コンプレッサーが完全に効き始めるまでの時間を設定します。
    • 遅めのアタック(例: 10ms~50ms以上): アタック音(弓が弦に触れる瞬間など)のトランジェント(音の立ち上がり)を活かしたい場合に有効です。音の輪郭が残りやすくなります。
    • 速めのアタック(例: 1ms~10ms程度): トランジェントをしっかりと抑え込み、よりスムーズで均一な音量感を得たい場合に有効です。ただし、速すぎるとアタック感が失われ、音が引っ込んで聴こえることがあります。サスティンが長いレガート奏法などでは比較的速めのアタックが合うこともあります。
  • リリースタイム (Release Time): 音量がスレッショルドを下回ってから、コンプレッサーが圧縮をやめる(元の音量に戻る)までの時間を設定します。
    • ストリングスのようにサスティン(音の伸び)が長いサウンドには、中程度から遅めのリリース(例: 100ms~500ms、あるいはそれ以上)が適しています。リリースが速すぎると、音量の変動に合わせてコンプがかかったり外れたりして不自然なポンピング感(音がウネる感じ)が出やすくなります。楽曲のテンポやフレーズの長さに合わせて調整し、自然に聴こえる値を探しましょう。
    • スタッカートやピチカートのようにサスティンが短い奏法の場合は、比較的速いリリース(例: 50ms~150ms程度)の方が、次の音のアタックに影響を与えにくく、自然に機能することがあります。
  • ニー (Knee): スレッショルド付近でのコンプレッサーのかかり具合を調整します。ソフトニーはスレッショルド付近で緩やかに圧縮を開始するため、より自然で音楽的なかかり方になります。ハードニーはスレッショルドを超えた瞬間に設定したレシオで圧縮するため、より明確にピークを抑えたい場合に有効です。ストリングスには一般的にソフトニーの方が馴染みやすい傾向があります。
  • メイクアップゲイン (Make-up Gain): コンプレッションによって減少した音量を補うためのゲインです。コンプレッサーをバイパスした時の音量と、オンにした時の音量が同じくらいになるように調整するのが基本です。

 

ストリングスへのリバーブのかけ方

リバーブプラグインの例

ストリングスはその性質上、広い空間で演奏されることが多く、リバーブ(残響)エフェクトとの相性が非常に良い楽器です。サンプリング音源やVSTインストゥルメント(ソフトウェア音源)を使用する場合でも、適切なリバーブを加えることで、サウンドに奥行きとリアルな響き、そして豊かな広がりを与えることができます。

一般的に、ストリングスにはホール(Concert Hall)やチャーチ(Church)といった、広くて響きの長いタイプのアルゴリズムがよく合います。これにより、オーケストラがコンサートホールで演奏しているような臨場感を演出できます。多くのリバーブプラグインには、これらの空間をシミュレートしたプリセットが用意されているので、まずはそこから試してみて、楽曲の雰囲気やテンポに合わせて微調整していくのが良いでしょう。

【リバーブ設定のポイント】

  • ディケイタイム(Decay Time / Reverb Time): 残響が消えるまでの長さを設定します。ストリングスの場合、2秒から5秒程度の比較的長めのディケイタイムを設定すると、豊かで広がりのある響きが得られます。ただし、楽曲のテンポが速い場合や、他の楽器が多い場合は、長すぎるとミックスが濁る原因になるため、短めに調整する必要があります。
  • プリディレイ(Pre-Delay): 原音が鳴ってからリバーブ音が聴こえ始めるまでの時間差を設定します。この値を適切に設定する(例: 20ms~80ms程度)ことで、原音のアタック感(輪郭)がリバーブに埋もれるのを防ぎ、音の明瞭さを保つことができます。原音とリバーブ音の間にわずかな隙間を作るイメージです。
  • リバーブ音へのEQ処理: リバーブの響き自体がミックスを濁らせる原因になることもあります。特に低域の響きは膨らみやすいので、リバーブ音に対してEQ処理を行うことが非常に重要です。
    • ハイパスフィルター(ローカット): リバーブ音の150Hz~300Hzあたりから下の帯域をカットすることで、低域の濁りを大幅に軽減できます。カットする周波数は、ミックス全体のバランスを見ながら調整します。
    • ローパスフィルター(ハイカット): 必要に応じて、リバーブ音の高域をカットすることで、響きをより柔らかく、奥まった印象にすることができます。
    • 中域のカット: リバーブ音の中域(例: 500Hz~2kHzあたり)が他の楽器とぶつかる場合、その帯域を少しカットすると、よりスッキリとしたミックスになります。
  • センド&リターンでの使用: リバーブは、個々のトラックに直接インサートするのではなく、センド&リターン方式で使用するのが一般的です。FXトラック(AUXトラック)にリバーブプラグインを立ち上げ、各ストリングストラックからそのFXトラックへ送る信号量(センドレベル)を調整することで、リバーブの深さをコントロールします。これにより、複数のトラックで同じリバーブを共有でき、CPU負荷を軽減できるだけでなく、楽曲全体で統一感のある響きを得やすくなります。

 

【応用編】モジュレーション系エフェクトで厚みと広がりを加える

モジュレーションによる音の変化

EQ、コンプレッサー、リバーブによる基本的な処理に加えて、モジュレーション系エフェクトを使用することで、ストリングスのサウンドにさらなる厚み、広がり、あるいは独特の質感を加えることができます。

例えば、ストリングストラックのサウンドが少し薄い、あるいは単調に感じられる場合に、コーラスエフェクトを軽くかけると、音に揺らぎと広がりが加わり、より豊かで壮大なサウンドに聴かせることができます。これは、元の音に対してわずかにピッチやタイミングをずらした音を複数重ねることで、疑似的に人数感を増やす効果(アンサンブル効果)を狙うものです。シンセサイザーでよく用いられるデチューン(ピッチをわずかにずらす)効果と似た原理です。

他にも、非常に短いディレイタイム(数ms~数十ms)のショートディレイを使ってダブリング効果を得たり、アンサンブル系と呼ばれる、より複雑なモジュレーションで自然な厚みを出すエフェクトなども有効です。

ただし、これらのモジュレーション系エフェクトは、かけすぎると位相の問題を引き起こしたり、ピッチ感が不安定になったり、サウンドが不必要に後ろに引っ込んでしまったり、ミックス全体がぼやけてしまう可能性があります。あくまで「隠し味」程度に、効果を確かめながら慎重に適用することが重要です。コーラスなども、リバーブと同様にセンド&リターンで使用し、原音と混ぜる量を調整すると、より自然な効果が得やすいでしょう。

パンニングでステレオ空間を演出する

ストリングスセクション全体の広がりや、各楽器の定位感を明確にするためには、パンニング(Pan / Panning)が非常に重要です。特に複数のストリングスパート(1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなど)がある場合は、それぞれのパートをステレオ空間内の適切な位置に配置することで、リアルなオーケストラの臨場感や、サウンド全体のワイド感を演出することができます。

【パンニングの考え方】

  • オーケストラ配置を参考にする: 伝統的なオーケストラの座席配置を参考にすると、自然な広がりを作りやすいです。一般的には、客席から見て左側に1stヴァイオリン、その右隣に2ndヴァイオリン、中央やや右にヴィオラ、右側にチェロ、そしてチェロの後ろや右端にコントラバスが配置されることが多いです。これを参考に、各パートのパンを左右に振り分けます。(例: 1st Vn: L 30-60 / 2nd Vn: L 15-40 / Vla: R 15-40 / Vc: R 30-60 / Cb: R 40-70 など ※あくまで一例)
  • LCRパンニング: よりシンプルな方法として、主要なパートを左(L)、中央(C)、右(R)に振り分けるLCRパンニングも有効です。例えば、高音パートを左、中音パートを中央、低音パートを右、といった具合です。
  • ステレオ音源の場合: ストリングス音源が最初からステレオで収録されている場合、パンニングで左右どちらかに完全に振り切ると不自然になることがあります。その場合は、ステレオの幅(Width)を調整するプラグインを使ったり、パンはセンター付近に留めておくなどの工夫が必要です。
  • バランスを聴く: 最終的には、他の楽器との兼ね合いや楽曲全体のバランスを聴きながら、各パートのパンニング位置を微調整します。モノラルで再生しても、主要な要素が消えてしまわないか確認することも重要です。


サチュレーションで存在感をプラス

ストリングスサウンドにもう少し暖かみや存在感、アナログ的な質感が欲しい場合に、サチュレーション(Saturation)や軽いオーバードライブといった歪み系エフェクトが有効な場合があります。

サチュレーションは、真空管やアナログテープが持つ、サウンドに倍音を付加して飽和させる効果をシミュレートするものです。これをストリングスに薄く適用することで、サウンドが豊かになり、埋もれがちな中域が持ち上がり、ミックスの中での存在感を増すことができます。特に、少し硬質で冷たい印象のデジタル音源に対して、アナログ的な暖かみを加えるのに役立ちます。

ただし、これもかけすぎると明らかに歪んだサウンドになってしまい、ストリングス本来の美しさを損なう可能性があります。ドライブ量を控えめに設定し、原音とミックス(Dry/Wet)できるタイプのプラグインであれば、混ぜ具合を調整しながら、 subtle(さりげない)効果を狙うのが良いでしょう。

【打ち込み向け】表現力を高めるためのヒント

ソフトウェア音源でストリングスを打ち込む場合、生演奏のような表現力を加えることが、リアルで感動的なサウンドを得るための鍵となります。以下の点を意識してみましょう。

  • ベロシティ(Velocity): ノートごとの音の強弱(音量や音色変化)をコントロールします。単一のベロシティで打ち込むのではなく、フレーズの抑揚に合わせて細かく変化をつけましょう。
  • エクスプレッション(Expression / CC#11): ベロシティとは別に、連続的な音量変化をコントロールできます。クレッシェンド(だんだん強く)やデクレッシェンド(だんだん弱く)といったダイナミクスの変化を滑らかに表現するために不可欠です。
  • モジュレーション(Modulation / CC#1): 主にビブラートの深さをコントロールするために使われます。ロングトーン(長く伸ばす音)に自然な揺らぎを加えることで、より人間的な表現になります。
  • アーティキュレーション(Articulation)の活用: 多くの高品質なストリングス音源には、レガート、スタッカート、ピチカート、スピッカート、トレモロなど、様々な奏法(アーティキュレーション)が収録されています。これらをキースイッチなどで切り替えながら打ち込むことで、フレーズに合ったリアルな演奏表現が可能になります。
  • タイミングの微調整(クオンタイズの緩和): 全てのノートを完全にグリッド(拍)に合わせる(クオンタイズする)と、機械的な印象になりがちです。わずかにタイミングを前後にずらす(ヒューマナイズ)ことで、より自然な揺らぎやグルーヴ感が生まれます。


まとめ

ストリングスを綺麗にミックスするための方法について、基本的な考え方から応用テクニックまでご紹介しました。

EQで不要な帯域の整理と他の楽器との住み分けを行い、コンプレッサーでダイナミクスを整え、リバーブで適切な空間を与え、必要に応じてモジュレーションやサチュレーションで質感や厚みを加える。そしてパンニングで立体的な配置を決める。これらの基本的な処理を丁寧に行うことで、ストリングスは楽曲の中でその魅力を最大限に発揮し、よりプロフェッショナルなサウンドに仕上げることができます。

ストリングスをリード楽器として前面に出すのか、あるいはアンサンブルとして楽曲全体を下支えする役割で鳴らすのかによって、具体的なミックスのアプローチは変わってきます。しかし、今回ご紹介した基本的な考え方やテクニックは、どのような場合でも応用できるはずです。

以上、「ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTM定番テクニック】」でした。


ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTM】

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