エレキギターに役立つ7つのミキシングテクニック【DTM】
ポップス、ロック、メタルでは必須の楽器であるエレキギター。
非常に幅広いレンジを持ち、特にディストーションを加えたエレキギターは低音から高音までを一つの楽器でカバーできるほどのエネルギー持っている楽器です。
エレキギターを上手くミックスすることでミックスをさらに厚く、パワフルにすることができ、トラックに膨大なエネルギーを追加することができますが、適切な処理をしなければ他の楽器のスペースまで埋めてしまう可能性もあります。
そこで今回はエレキギターを上手にミックスする為のテクニックをいくつかご紹介します。
1. エレキギターの役割を考える
まずミックスを始める前に、使用するエレキギターの役割を考えることが非常に重要です。
例えば、ギターソロは曲のメインとなるメロディーを演奏するので、他の楽器よりも目立つようにミックスする必要があります。一方で、リズムギターは曲のグルーヴを支える役割を果たすので、他の楽器と調和するようにミックスする必要があります。
さらに、多くの場合は「ボーカリスト」が存在し、リスナーはボーカリストの歌声にフォーカスしているということを考慮して、時にはエレキギターの持つ幅広い音域とエネルギーを削り落とす必要も出てきます。
このように、音楽ジャンルやエレキギターの役割を考えて、音量感や音質を決定する必要性があります。
2. 音量バランスを取る
実際にEQとコンプレッサーを使ったミキシング作業に移る前に、エレキギターの音量バランスをとって、ミックス内にうまく配置する必要があります。
多くの方がEQを使った音質バランスや、コンプレッサーでのダイナミクスコントロール等に多くの時間を費やしますが、フェーダーによる音量バランスを取ることにまずは集中します。
元々はアナログエフェクトの前の時代(1950年代頃)、オーディオエンジニアは実際には「バランスエンジニア」と呼ばれており、エンジニアの仕事は単に録音された楽器の音量バランスを取ることでした。
エレキギターが他の楽器とのバランスが取れていないと、いくらエフェクトを使って処理したところで最終的なトラック品質の向上には繋がりません。
トラックインサートにエフェクトを挿す前に、まずはたっぷりと時間をかけてボリュームフェーダーを調節して、最適な音量を探してみてください。
→ミキシングの3大要素【音量・定位・音質】について
3. パンニングを振る
パンニングとはステレオ空間の中のどこに楽器を配置するかを調節するツールのことで、パンを左に振ると左側のスピーカーから出力され、反対に逆に振ると右側から出力されます。
エレキギターをライン入力で録音した場合はモノラルの状態なので、立体感を持たせたい場合にはステレオイメージャーやダブリング効果を付与するエフェクトを使う必要があります。
コード弾きのギタートラックを左右に広げる一般的なテクニックとして、同じテイクを2回録音してから、片方を左100、もう片方を右100にパンニングするという方法もあります。
4. 必要のない音域をカットする
多くの人はエレキギターのコードバッキングを可能な限り重ねて、音圧を稼ごうとしますが、実際には重ねれば重ねるほどトラック全体は「どろどろ」になり、他の楽器とのマスキングによるこもりが発生してしまいます。
初めにも言いましたが、エレキギターは非常に音域の広い楽器なので、必要のない音域は他の楽器に譲って、しっかりと分離させることが大切です。
通常はEQ(イコライザー)と呼ばれるツールを使い、ベースと重なる100Hz以下にローカットを入れたり、ボーカルと重なる部分でピーク処理します。
→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
ギター単体で聴くと低音が足りないスカスカなサウンドになっているように感じますが、ミックス全体を見て、しっかりと他の楽器スペースと住み分けをすることで、解像度の高い音圧のあるトラックが手に入ります。
5. ダイナミクスレンジを整える
ダイナミクスレンジとは大きい音と小さい音との差のことをいい、エレキギターは人が演奏する楽器なので、音量の振り幅が大きくなりがちです。
特に歪み量の少ないクリーンギターや、オーバードライブぐらいの軽い歪みで演奏する場合は、大きい音をコンプレッサーで圧縮することで、音量に均一に保つことができます。
もちろんコンプレッサーを使った圧縮はデメリットも多いので、トラックに対して圧縮が必要かどうかは、エレキギターの役割を考えて慎重に判断する必要があります。
ちなみに激しく歪んだディストーションやファズのようなギターは、歪み自体が激しいコンプレッションによるものなので、さらに圧縮すると多くのトランジェント(エッジ感)が失われて、のべっとしたサウンドになってしまう可能性があります。
→コンプレッサーの基本的な使い方
6. バストラックにまとめる
複数のギタートラックがある場合は1つのAuxチャンネルに送信して、まとめて処理することも効果的です。
バストラックを作成することは複数のトラックを「接着」するのに役立つだけでなく、使用するプラグインの数を減らすことで、CPU使用の削減にも繋がります。
もちろん役割が違う場合には、それぞれに最適なパラメーター値は変化するので、まとめてエフェクトをかけるのは最適とはいえませんが、例えば4つのバッキングトラックがある場合。通常はそれぞれのトラックにコンプレッサーを挿して圧縮する必要がありますが、バストラックではギタートラック全体に1つのコンプレッサーを使用するだけで済みます。
これによりCPUを大幅に節約できるため、プロジェクトが大きくなってもPCが重くなったり、思わぬシャットダウンを回避することができ、時間を大幅に節約できます。
7. ハイミッドの重要性
ロックサウンドにおけるエレキギターは2k~5kHz周辺のハイミッドの音域が重要なポイントになってきます。
非常に幅広いレンジを持っているとはいえ、低域はベースがいて、中域にはボーカル、高域にはドラムの金物やシンセサイザーなど、実際には多くの楽器に占領されているので、使える音域は限られています。
混在したミックスの中で、唯一ギターの一番おいしい部分を最も強調できるのが、 2k~5kHz周辺の周波数帯域になるという訳です。
ただし、このハイミッドブーストが必要かどうかもギター本来のトーン(もとから2kHz周辺が強く出ている)や他の楽器との兼ね合いが関わってくるので、必ずブーストするのが正解というわけではありません。
特に、2kHz周辺は人の耳が一番認知しやすい音域なので、ブーストしすぎると非常に耳障りな音質になってしまうこともあるので慎重に行いましょう。
→バッキングギター 5つのミキシングテクニック
まとめ
エレキギターの7つのミキシングテクニックについてお話しました。
- エレキギターの役割を考える
- 音量バランスを取る
- パンニングを振る
- 必要の無い音音域をカットする
- ダイナミクスレンジを整える
- バストラックにまとめる
- ハイミッドの重要性
エレキギターを上手くミックスすることが出来れば、一つの楽器で非常に幅広い音域をカバーすることも可能になります。
バッキング、リード、ギターソロといったエレキギターの役割やジャンルを考えて、最適なミキシングを施しましょう。
以上、「エレキギターに役立つ7つのミキシングテクニック」でした。