ダンスミュージックのキック&ベースミキシングのやり方【DTM】
DAWを使ったEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)の制作は、シンセサイザーのようなソフトウェアの操作、各種エフェクト関連、ミキシングテクニック等、覚えることが多いですが、その分他の音楽ジャンルにはないような制作の自由度の高さが特徴です。
EDM制作においては、特に低音部分であるローエンドのミキシングが非常に重要となり、楽曲にパワーとグルーヴを与える為に欠かせない工程となっています。
今回はこれからDTMを使ってEDMの制作をはじめる方に向けて、ダンスミュージックのキックとベースのミキシングについてご紹介します。
1. サンプル選び
まず、トラックに合った最適なサンプルを選ぶことからはじめましょう。EDM制作においてはループ素材や音源サンプル、シンセなど、元となる音源の音色選びがもっとも重要であるといえます。
質の悪いキックサンプルを時間をかけて良質なものにしようとするよりも、はじめから質の良いサンプルを選ぶ方がはるかに効率的です。
LoopCloundやSpliceのような、信頼性のあるサンプルライブラリで良いサンプルを探すか、良質なドラムマシンを使用して微調整を行って作成しましょう。
2. EQを使って整える
EQは、キックやベースの音質を調整するために役立つ便利ツールです。キックの中音域と高音域は、キックのキャラクターが決まる重要な帯域です。キックの特性にもよりますが、一般的には耳障りなノイズを軽減するために16kHzを超える音をカットしてみましょう。
ミックスの中でキックの存在感を高めるには、4kHzの範囲をブーストすることでビーターアタックの音が抜けてきます。しかし、6~700Hz周辺に不快な響きが鳴っていることが多いので、この帯域をカットすることもあります。
一部のキックには、400Hz近くに濁りの原因が潜んでおり、この部分をカットしてクリーンなサウンドにすることができます。また、キックに厚み低音感が足りないと感じている場合は、120Hz近くをブーストすることもありますが、ベースとの音被りに注意が必要です。
サブ領域の30Hz以下でハイパスフィルターを適用することで、サブベースと競合するのを回避することができます。
ハイパスフィルターで余分な帯域をカット
キックとベースにはローエンド処理が必要になり、ミックスの中でも難易度の高いミックス工程になります。
濁っていると感じる場合は、なるべくキックドラムやベースに他の楽器の低音要素が干渉しないように、すべてのトラックからハイパスフィルターを使ってローエンドのカットすることを試してみてください。
4. コンプレッサーで圧縮
キックとベースのミキシング時に、コンプレッサーを使った圧縮処理が非常に効果的です。キックとベースは低音にエネルギーが集まっている楽器なので、適度に圧縮を加えて、重みと存在感を持たせる必要があります。
通常は、4:1のレシオ値で速めのアタックタイムに設定します。スレッショルドを使って約3〜4dBのゲインリダクションになるように調整し、リリースを約150〜200ミリ秒に設定します。もちろん、アタック音の強調具合いや、サンプルの特性によって最適な値は変化します。
キックにまだパンチやアグレッシブさが足りないと感じる場合は、わずかにサチュレーションを加え、ハーモニクスを増加させることをおすすめします。
コンプレッサーだけでは、望むサウンドに達しない場合、より高度なパラレルコンプレッションを適用することもあります。
5. キックをモノラル化する
位相の問題を防ぐために、キックやベースの超低音域をモノラル化することをおすすめします。Mid成分から上は左右に広げることはあっても、80Hz以下のサブ帯域はセンターにすることで、様々なトラブルを回避するのにも役立ちます。
超低域がステレオかモノラルかを確認するために無料のベクタースコーププラグインを使い、DAWに標準搭載されているモノラルパラメーターやステレオイメージャーを使ってセンターにします。
重要なローエンドをセンターに配置することで、力強いエネルギッシュなロー成分を、常にトラック全体に供給し続けることができます。
6. 中低音域のブースト
残念ながら80Hz以下のサブベース帯域は、スマホスピーカーや安価なイヤホンー、ノートPCの純正スピーカーなどの低音再生能力に乏しいリスニング機器では上手く再生することができません。
現代のリスニング環境に対応したミックスを考える【DTM】
そこで重要になるのが、100~300Hzの範囲の中低音域で、どんな再生機器でもベースラインの存在感を引き立てるのに重要な帯域になります。
通常は、ベースに中低音のレイヤー(ノコギリ波、サイン波)を追加して、この帯域を補強します。また、サチュレーションをかけることで倍音を強調し、高調波をブーストする方法もよく使われます。
7. 必須のサイドチェインテクニック
サイドチェインと呼ばれるミキシングテクニックを使うことで、キックが踏まれた瞬間にだけベースの音量を一時的に下げることができ、キックの持つエネルギーを100%伝えることができます。
サイドチェインは、さまざまなジャンルで使用されているテクニックですが、キックとベースにフォーカスしたEDMのようなジャンルでは、ほぼ必須のテクニックとして広く採用されています。
DAWのパラメーターを設定することでサイドチェインをかけることは可能ですが、設定が難しい場合はサイドチェイン用プラグインを使うことで簡単に設定ができるのでおすすめです。
まとめ
EDMのキックとベースのミキシングは、ミキシング工程の重要なステップであり、楽曲全体のエネルギーとグルーヴ感に直結する要素となります。
以下は、キックとベースのミキシングに関するポイントのまとめです。
- サンプル選びが重要
質の良いキックとベースのサンプルを選びましょう。信頼性のあるサンプルライブラリを活用するか、ドラムマシンを調整して作成しましょう。 - EQを使って音を調整
中音域と高音域の調整によってキックとベースのキャラクターが変わります。ノイズをカットし、存在感を高めるためにEQを活用しましょう。 - コンプレッサーを使用して圧縮
適切なレシオとアタックタイムを設定し、存在感を引き立てましょう。サチュレーションを加えてアグレッシブなサウンドを作り出すこともできます。 - 超低音域をモノラルにする
サブ領域はセンター配置することで、力強いローエンドを確保します。 - 中低音域をブースト
どのリスニング機器でもベースの存在感が引き立つようにしましょう。サチュレーションを使用して倍音を強調し、高調波をブーストすることもできます。 - サイドチェインテクニック
キックが鳴った瞬間にベースの音量を一時的に下げることができるサイドチェインを使って、キックとベースの住み分けをしましょう。
これらのステップを念頭に置きながら、キックとベースのミキシングを行うと、EDMの制作においてパワフルでグルーヴィなサウンドを実現できます。
以上、「ダンスミュージックのキック&ベースミキシングのやり方【DTM】」でした。