作曲力を上げる為のリスニング術【音楽を聴いて学ぶ】
いざ作曲をはじめるとき、知識やテクニック無しでいきなり曲を書き始めることは、多くの時間と労力を費やす無謀なチャレンジです。
多くの作曲家は自分のセンスを信じて作曲をはじめ、時間の経過と共にプロの楽曲とのクオリティの差に気付き、自分には才能が無いと去っていくか、そこでようやく知識やテクニックについて学びはじめます。
もちろん才能に恵まれた人もごく少数いるかもしれませんが、他のアートと同様に、仕事として継続的に制作を続けるには、インスピレーションの泉が枯れたときに知識とテクニックをどのように駆使するかが重要です。
作曲家、ソングライターとして学ぶことができる最も重要なテクニックの1つは既存楽曲のリスニングです。今回は普段何気なく聴いている音楽から作曲力を上げる為に行うリスニング方法についてご紹介します。
音楽のセオリーを知ること
音楽は自由といえど、世の中に出回っている多くの楽曲はセオリーに沿って制作されていることが多くあります。
例えばリズムパターンやコード進行、ボーカルメロディー等、多くの要素が含まれていますが、メジャーのトップチャートにランクインするような楽曲はしっかりと音楽的セオリーに沿った内容になっていることがほとんどです。
普段から意識的に個別のパートやセクションを聴くことで、その流れやリズムに気づき、セオリーパターンを見つけることができます。
実際に、これらの音楽コンポーネントのそれぞれを分解し、既存の楽曲を聴いて自分の作詞作曲を改善する方法について説明します。
1. メロディー
印象に残るメロディーにはモチーフが含まれています。
モチーフとは短い小節数を繰り返し鳴る音符パターンのことで、楽曲テーマを構成する最小単位のメロディーの流れのことです。
楽曲全体で何度も繰り返される一連の音符パターンは、サビとABメロには類似または対照的なモチーフがあり、Cメロや大サビにはさらに発展させた別のモチーフがあります。
素晴らしいモチーフは、曲を定義するほどの強力なピッチとリズムの組み合わせで成り立っていて、一部の商業的な作曲家は、楽曲全体で頻繁に繰り返される短いモチーフを何度も採用することがよくあります。
商業的でない、「アート」としての作曲家は、モチーフを長くしたり、繰り返しすことも少なめにし、あるタイミングでモチーフ自体をより大幅に変更したりすることもあります。
とはいえ、モチーフを変えすぎて認識できないほどになると、雑なメロディーに聞こえ始めることもあるので、注意が必要です。
印象に残るすべての音楽は、少なくとも1つの音楽モチーフに基づいています。
→メロディーの作り方【音を外さない方法】
リズムと音程
メロディーにとって大きな要素となるのはリズムと音程です。
メロディーを深く理解する為には、どの音程で歌うか、どこでどのくらいのタイミング、音価(音符の長さ)で歌っているかを知る必要があります。
ピッチを観察する為の具体的な方法は、好きな曲を選んで、Aメロやサビの最初の2小節ぐらいに焦点をあてて、モチーフを確認します。
- 音程が密集しているか。(スケール上で互いに近い距離にいるか)
- 音程間隔は大きく離れているか。
- 音程の流れが上昇しているか、下降しているか。
- 印象として明るく聴こえるか、暗く聴こえるか。
- ボーカリストの低音域、中音域、高音域のどこにいるか。
これらのことを注意しながら10曲ぐらいリスニングすることで、自分はどういったメロディーの形が好きなのかを理解でき、自分の曲のメロディーを書く際の選択肢がより明確になります。
メロディーとコードの関係
メロディーとコードは密接に関係しており、コードの上でどの音を鳴らしているかということはメロディーを理解する上で重要な要素となります。
→ダイアトニックコードとは?【作曲に役立つ音楽理論】
理論的に読み解くことも大切ですが、まずは感覚的に伴奏とメロディーの音を聴いてどういった印象が得られるかを感じとります。
- メロディーが後ろで鳴っているコードと馴染みが良いか。(コードと同じ音か)それとも馴染みが悪く緊張感があるかどうか。
- コードチェンジ中に音程が止まっているか動いているか。
- 音程はコードと平行に移動しているかどうか(スケールを上昇または下降しているか)または、音程はベース音の動きとは逆に動く傾向があるかどうか。
普段のリスニング環境でメロディーとコードの関係性を具体的に読み解くのは難しいですが、意識的に伴奏とメロディーに意識を向けて聴くことで相対的な音感と、印象的なメロディーセンスを養うことができます。
メロディーリズム
次にメロディーのリズムに注意を向けます。同じように以下は、メロディーのリズムを定義するのに役立つヒントです。
- 音符の長さは基本的に短いか長いか。
- メロディーモチーフが1拍目の前、1拍目の頭、1拍目の後ろのどこから始まっているか。
- 音符の間に休符はどれくらいあるか。
- メロディーのアクセントは表拍か裏拍か、シンコペーションを使っているか。
以上のことを意識しながら曲の各セクションでメロディーの流れに注目します。
メロディーを実際に作成するときにアイデアが枯渇したり、マンネリ状態に入ってしまったときには、ABメロとサビの全体でコード進行と音程、タイミングを意識しながら作成することで、今まで以上の新しい高度なメロディーを生み出せる可能性があります。
コード進行
コード進行が楽曲の雰囲気を大きく左右することは多くの作曲家が認識しており、プロの楽曲のコード進行から生まれる楽曲全体の雰囲気は学ぶべきことがたくさんあります。
実際に音楽を聴いているときに「これは〇〇コードだ」と認識しながらリスニングするのは非常に難しいので、まずは以下の2つの要素に注目します。
- 一つのコードがどれくらいの長さ持続しているか。
- コード進行1ループは何小節あるか。
何曲か続けてAメロ、Bメロ、サビ、Cメロとセクションごとにこれらを比べることで、コード理論の重要なテクニックを自然と理解することができます。
さらにコード進行の仕組みを理解するには少しの音楽理論と熟練された耳が必要となります。
コードを認識する
コード進行の流れが大体読めたら、次に一つ一つのコードの特性を聴き取る練習もやってみましょう。
「Cコード」等のコード名を言い当てる必要はなく、マイナー、メジャー、ドミナントセブン等のコードキャラクターを聴き分けることが重要です。
多くの人は、何の情報もなしにコードの雰囲気だけでもメジャーコードとマイナーコードの違いを聴き分けることは簡単です。 メジャーコードは明るく幸せな音を出しますが、マイナーコードは暗く、悲しい感じの雰囲気を演出します。
しかし3音のトライアドコードに4番目のトーン(メジャー7またはドミナント7など)を追加すると、一気に難易度は跳ね上がります。
4和音の聴き分けは慣れるまでは難しいですが、メジャーコードとマイナーコードの違いを聴き分ける感覚と同じように、浮遊感を感じたり、激しい緊張感を感じたりと気持ちの変化を感じ取るようにすれば、個々のコードの分析も可能になります。
さらにそこから、コードのルート音(一番低い音)を聴いたり、 聞いているコードに一致する様々な音程を鼻歌で歌っていると、それらを組み合わせたスケールの感覚も得ることができます。
借用和音にだまされない
ほとんどのコードはスケール内の音から作られているので、音楽に合わせて鼻歌を歌うのは簡単ですが、ときどき、突然音が外れたように感じることがあります。
これは借用和音(モーダルインターチェンジ)と呼ばれるアレンジテクニックが使用されているからです。
一時的に別のキーからコードを借りてきて使用しているため、始めは違和感を感じますが、曲の中でこれらの借りてきた和音を聴き取る練習をすればするほど、借用和音が楽曲の中で何度も使用されていることに気付くでしょう。
似たようなアレンジとして「転調」も考えられますが、基本的には借用している長さによる違いなので、同じような感覚で聴き取れます。
グルーヴ感覚
コードを選択することで楽曲に個性的なサウンドを確立することができます。しかし、世の中の多くの曲のほとんどはまったく同じコード進行に依存しているという事実があります。
同じコードを利用して、個性溢れる印象的な曲を作成するために、曲の他の大きな要素として感覚的なグルーヴ感が存在します。
一般的にはリズムに対して使われることが多い用語ですが、音楽的なグルーヴ感覚はコードトーンやメロディー、リズム、音色、BPM等のトータル的な要素が合わさることで表現され、感情をリスナーに伝える方法です。
お気に入りの曲の最初の10秒を再生します。アーティストはどんな感情をリスナーに感じさせたいと思っているか、悲しみか陽気さか、復讐心か正義感、病んだ暗さやのんきな明るさ等、色んな楽曲で感じ取ってみてください。
その感情を伝えるている要因は主にコードなのか、楽曲のテンポなのか、それとも他の何かがその感情を伝えているのかを意識的に考えることで、より深く音楽を理解することができます。
まとめ
普段何気なく聴いている音楽を意識的に分析することで、多くの学びが得られます。
既存楽曲に対するリスニング意識を高めるということは、ゼロから音楽を学び始めるよりもはるかに効率的で、常に新しいアイデアを取り入れることができるようになります。
普段からリスニングを自然に行い、吸収したものを独自の方法で曲の構成に反映させることでミュージシャンとしても幅広い感性を手に入れることがでるようになります。
以上、「作曲力を上げる為のリスニング術【音楽を聴いて学ぶ】」 でした。