808キックの音作りのコツ!重厚なサウンドを手に入れる為の6つのテクニック
現在のヒップホップトラック制作に欠かせないのが、この808(エイト・オー・エイト)と呼ばれるRoland社のTR-808から生成させるベースサウンド。
多くのジャンルでキック、ベース、または両方の組み合わせとして使用されることが多いこの808サウンドは、間違いなく世界中の最も多くのトラックに使用され、電子ベース史上最も有名な音源です。
1983年には1万2千台しか製造されておらず、当時の価格で15万円で販売されていた国内製品であるにも関わらず、2024年になろうとしている現在、世界の音楽シーンを担う音源サンプルとして多くのエンジニアに使用されています。
今回は、そんな808キックの音作りのコツをご紹介します。
1. サンプルによって音が違う
808キックのサウンドは、サンプルによって微妙に音質が異なっているということを把握しておきましょう。サウンドライブラリに高品質な808キックが一つあれば良いというわけではなく、実際には、マシンによって生成される音自体や、その録音方法によって大きな違いがあります。
実機のTR-808ドラムマシンは製品ごとに音にばらつきがあることで有名で、どの808マシンも56Hz(A#より僅かに上)に調整されていましたが、実際にはマシンごとにかなりの差があったようです。また、機械の経年劣化も音質に影響を与える可能性があります。
さらに、サンプリングされた音源であれば、録音方法によって微妙なキャラクターを持つことがあります。コンプレッサーを通っっているかどうか、僅かなサチュレーションやノイズがあるか等、結構サンプルによってばらつきがあるので、よく808を使用する方は、色んなソースサウンドを用意しておくことをおすすめします。
音程が変化するものも…
特にクラシックな808のキックサンプルは、最初の音の立ち上がりからロングテールの終わりにかけて、ピッチが少し変化する傾向があります。この音程の変化は、サチュレーション等の倍音を付与している場合は特に顕著に表れます。
2. ピッチを修正する
808キックはベースのような扱いをすることも多いですが、徐々に減衰するテール部分に音程感が出やすいので注意しましょう。その為、楽曲のキーに合わせたり、逆に808が心地よく鳴るポイントに合わせてキーを調整する必要があります。
あまり大きく音程を変化させると波形が崩れてしまうので、耳で判断して使えないと思ったら、諦めて違うサンプルを探すことをおすすめします。
音程の確認方法
FL Studioの場合は「Edison」を使ってサンプルのピッチ確認ができます。
確認の方法がわからない場合はスペアナを使用して周波数を見て確認する方法もあります。
サンプルのピッチ修正のやり方はソフトウェアごとに異なるので、それぞれご利用のDAWのやり方に従ってください。ちなみにFL Studioの場合はサンプラーの「Pitch」から変更できます。
3. 他の楽器を重ねる
808キックは他のキックサンプルに比べて、アタック部分が薄いのが特徴です。
キックらしいパンチ感を得る為に、80~100Hz付近にピークのあるビーターアタックの効いたキックを使用し、それに対して808をレイヤーしてサイドチェインをかけることが多いです。※サンプルの中には、もとからキックを重ねてあるものも多いので注意してください。
重ねるキックサンプルによってキャラクターが大きく変化するので、どういったキックを重ねるのかはクリエイターの腕の見せ所です。
キックを合わせる時は、808のピッチに合わせるか5度上の音程になるように調節すると、綺麗に重ね合わせることができるので、濁っていたり少しこもった感じがする場合は試してみてください。
4. 低中音域の強化
808キックは、サブベースと呼ばれる非常に低い音域の音を鳴らします。低音再生能力の高いスピーカーやヘッドホンであれば、心地良い重厚感のある低音を聴くことができますが、安価なリスニング機器やスマホスピーカーでは認識することすら難しいです。
この問題を回避する為に効果的なのが、低中音域の強化です。EQでブーストするのもいいですが、サチュレーションエフェクトをかけることで倍音を強化し、ミックスの中でより存在感のあるサウンドにすることができます。
ドライブさせずに生のサウンドをそのままキープした場合には、リニアフェーズEQ等を使用して、強調したい領域を分離してから、並列でドライブ処理するのが効果的です。
5. コンプレッサーで整える
コンプレッサーを使って808キックを圧縮する際、アタックタイムとリリースタイムのコントロールが非常に重要になります。
808キックは、最初の打撃が最も力強く、徐々に減衰していくサウンドが特徴的です。これをコンプレッサーで圧縮すると808の特徴である独特の"減衰感"を失ってしまう可能性があります。(※あえて減衰感を無くすこともあります。)
また、アタック感を得る為にレイヤーしたキックサウンドを圧縮してしまうと、せっかくのパンチ感を失ってしまうので、遅めのアタックタイム音の立ち上がりは回避するようにして、でサウンドの減衰部分(低音域が多く含まれる部分)のみのダイナミクスを絞ることもできます。
アタック&リリースのパラメータでより理想的な808キックサウンドに成形することが可能なので、どのようにキックトーンやダイナミックレスポンスに影響を与えるのかを確認しながら、調整してみましょう。
6. 808キックの為のスペースを空ける
808キックのパワフルでヘビーなサウンドを最大限に活かしたい場合は、サブベースの帯域に他の楽器が干渉しないようにすることが重要です。
ベースやシンセサイザー、ピアノ、ギター等の伴奏楽器が、808キックと被らないようなアレンジにするのがベストですが、もし同時に再生されてしまう場合には、サイドチェインによるダッキングを加えたり、不要なローエンド周波数をロールオフするようにしましょう。
100Hz周辺からハイパスフィルターをかけて、808キックが持つ40~60Hzの基音に被らないようにすることで、クリーンかつ図太い808サウンドを鳴らすことができます。
まとめ
808キックの音作りのコツについてご紹介しました。
- サンプルによって音が違う
- ピッチを修正する
- 他の楽器を重ねる
- 低中音域の強化
- コンプレッサーで整える
- 808キックの為のスペースを空ける
808キックの音作りにおいて重要なのは、サンプルごとの違いを把握して、様々な音源を組み合わせることです。さらに、ピッチの調整やサチュレーションによる低中音域の強化など、細かなミキシングテクニックで強化することができます。
プロジェクトごとに最適な808サウンドは変化し、楽曲に合ったキー選定や最適なアレンジを施すことで、よりクリーンかつ迫力のある808サウンドを実現することができます。
以上、「808キックの音作りのコツ!重厚なサウンドを手に入れる為の6つのテクニック」でした。
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