ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTM】
ストリングスはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなどの弦楽器、またはそれらの重なる音色、演奏のこと指します。
ストリングス楽器は作品に華やかさと壮大さを加えるのに適していますが、ミックスの中で必要以上に目立ってしまったり、広い音域を占領してしまいがちです。
ストリング同士をレイヤーさせたり、他の楽器とのマスキングを避けてうまく馴染ませるのには、少しのテクニックとコツが必要になります。
そこで今回は、音楽制作におけるストリングスを綺麗に鳴らす為のミックス方法についてご紹介します。
ストリングスのミックスが難しい理由
ストリングスをミックス内で綺麗に鳴らすことが難しい理由としては
- 広い周波数帯域
- 生演奏によるダイナミクスの幅
があります。ストリングスは他の楽器に比べると、高音から低音までの広い周波数帯域を持った楽器が複数使われていることもあり、ヴァイオリンやヴィオラなどの高音域の弦では、耳に刺さるトップエンドが発生することがよくあります。
反対にチェロとベースでは、ブーミーなローエンド周波数帯域が飽和してミックスが濁り、ミックス全体の明瞭さが失われる可能性があります。
基本的にはEQやコンプレッサーといったエフェクトを利用しながら、これらの問題点を解決することがストリングスのミックスでは重要になります。
ストリングスのEQ処理
まずはミックス内でストリングスを配置したい帯域を見極めて、他の楽器がいる場合はぶつからないようにイコライザーエフェクトを使って正しくEQ処理を施す必要があります。
バイオリン、ビオラ、チェロ、ベースと一つ一つが鳴っているのか、混ざり合ったアンサンブルなのかで処理方法は大きく変わりますが、今回は低音を担当するストリングスと高音を担当するストリングスに分けて解説します。
高音担当のストリングス
高音タイプのストリングのミックスは、まずローエンドの泥やうなりを取り除くために、約80Hz未満の帯域をハイパスフィルターですべて取り除く必要があります。続いて、100Hzから150Hzあたりを狭いQ幅で少しブーストすると 、どっしりとした楽器のボトムエンドが追加されます。
バンドのようなアンサンブルの場合、他の楽器が集まりやすい200Hz周辺をカットすると濁りがなくなってスッキリとした印象になるので試してみてください。
一番おいしい帯域の高音部分に太さが足りないと感じる場合には380Hz付近を広いQ幅でブーストするのがいいですが、ボーカル等の重要なトラックとぶつかる可能性があるので注意してください。
約2.5kHz、4.6kHz、7kHzに耳に刺さるようなピークが発生することがあるので、イコライザー(EQ)を使って不要な共鳴音を処理する方法を参考にしながら狭いQ幅でピーク処理しましょう。
低音担当のストリングス
低音側のストリングスの場合、高音側の反対の方法が上手く機能します。
80Hz未満のものをすべて取り除くことからスタートして。中低域で弦がベースギターと衝突している場合は、100Hzから250Hz付近をカットするとマスキングが解消されます。
低音ストリングスがミックスで上手く鳴るようにするには、1kHz辺りから約6kHzの広いQでブーストすることで、適度にクランチトーンが追加されることで存在感が出てきます。※この場所にすでに他の楽器が配置されている場合は「EQスウィープ」して最適なポイントを見つける必要があります。
存在感や明瞭感を加えるには、 6kHzから8kHz 付近をハイシェルフを使ってブーストするとうまくいきます。
高音でも低音でも、8kHz~12kHzあたりをブーストするとエアー感が加わります。
最適なEQの設定値はさまざまな要因を受けて変化します。上記で紹介した設定値はあくまで参考程度にして、必ず耳を使ってEQ処理するように注意してください。
ストリングスのコンプレッサー処理
EQ処理が終わったら、続いてコンプレッサーエフェクトを加えて音量のピークを抑えて、楽器の音量感を一定に保つことが重要です。
ストリングスの音量を一定に保つことで、ミックス内で狙ったポジションに正しく配置することができるようになります。しかし、すべてのダイナミクスを潰すような過剰なコンプレッションは、ストリングス本来のサウンドを無くしてしまい、のべっとした不自然なトーンにもなり得るので注意が必要です。
ストリングスのコンプレッサーのかけ方
ストリングスのようにサスティンが長い場合は、コンプレッサーのアタックを速くして、リリースタイムを中~遅いくらいに設定します。反対にピッチカートのようにサスティンの短い奏法をしている場合は、速いアタックと速いリリースを適用することでうまく機能します。
レシオの設定は音量ピークの大きさによって異なります。ピークが大きいほどダイナミックレンジが高くなるので高いレシオ値で圧縮する必要があります。
ストリングスへのリバーブのかけ方
ストリングスは実際にはコンサートホールのような大規模な会場で鳴らすことが多く、サンプル音源、または VSTインストゥルメントのいずれであっても、リバーブエフェクトとの相性は抜群です。
ストリングストラックには、中~大規模のホールリバーブを適用するとリアルなサウンドが手に入ります。所持しているリバーブエフェクトにホールやチャーチのプリセットがある場合は、そこからスタートしてプロジェクトに合うように微調整しましょう。
ディケイを長めにして3~5秒くらい残響が残るようにすると良いです。長いリバーブによってミックスが濁るのを防ぐためにプリディレイパラメータを使用して、トランジェントに被らないように設定して、リバーブ音に対して200Hz~くらいからハイパスフィルターをかけましょう。
モジュレーションで厚みを加える
モジュレーション エフェクトを使用して、ストリングスのサウンドに厚みを加えることもできます。
例えば、ストリングストラックが薄いと感じる場合には、コーラスエフェクトを追加することで、サウンドをさらに壮大にすることができます。
シンセサイザーのデチューン効果に似ていますが、やりすぎるとストリングストラックが後ろに引っ込んだり、ミックス全体が濁ったりする可能性があります。
まとめ
ストリングスを綺麗にミックスする方法についてご紹介しました。
EQで不要な帯域を処理して、コンプレッサーでダイナミクスを整え、リバーブやモジュレーション効果で装飾することで、より良いサウンドに仕上げることができます。
ヴァイオリンをリードとして使うのか、アンサンブルで全体を支えるようなポジションで鳴らすのかで、ミックス方法は大きく変わってきますが、基礎的な内容は変わりません。
楽器被りや濁りに注意しながら自分の耳を頼りにストリングを綺麗にミックスしてみましょう。
以上、「ストリングスを綺麗にミックスする方法【DTM】」でした。
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