ボーカルレコーディングのやり方と綺麗に録るコツ
最近では、ほとんどのインディーアーティストや個人の独立型のアーティストは、自宅でボーカルレコーディングすることが多いかと思います。
音楽において、ボーカル品質はトラックの良し悪しに大きく影響する要素の一つなので、適切なレコーディングプロセスを実行することが重要になります。
便利な機材やソフトウェアのおかげで自宅にいながら高品質な歌声を収音することができるようになったので、今回ご紹介する正しい録音知識を身に着けて、ワンランク上のボーカルトラックを目指しましょう。
機材と室内環境を整える
高品質なボーカルトラックを録音するために、実際には超高価な機器やプロ仕様のボーカルブースは必要ありません。もちろん、予算的に余裕があるのなら導入を検討するのもアリですが、手頃な価格の機材や身の回りの環境を利用して録ることも十分可能です。
マイクの種類
ボーカルを録音する場合、通常はコンデンサーマイクが最適です。ダイナミックマイクよりも繊細な多くのディテールを拾う敏感なマイクで、環境を整えれば最高品質で収音することができます。
コンデンサーマイクは高価なイメージがありますが、コスパの良い手頃な価格のマイクを探している場合は、Audio-Technica AT2035やRode NT1-Aがおすすめです。どちらも手頃な価格かつ、多くのプロエンジニアから高く評価されている信頼度の高いマイクです。
必要であればマイクスタンドとポップフィルターも用意すると、不要なノイズを低減することができます。
録音環境
室内録音するときの一般的なルールは、録音する部屋をできるだけ無音にすることです。
こうすることで、マイクに余計な環境音や残響が入り込むことを防ぐことができるので、よりクリーンなボーカルトラックが入手できます。もし残響音が必要な場合は、あとからリバーブプラグインを使って付与したほうが結果的に良くなりやすいです。
理想的は、プロ仕様の音響パネル、バストラップ、サウンドディフューザーを用意できればいいですが、代用品として、厚手の毛布、クッション、カーテン等を使用するプロデューサーもいます。服のかかったクローゼットの中を利用するのもおすすめです。
ヘッドホンを使って録音する
ボーカルを録音するときは、ヘッドフォンを使用する必要があります。スピーカーを使用するとモニター音がマイクに流れ込んでしまう為です。
解像度の高いモニター用のヘッドホンがあればいいですが、基本的にはクローズドバックタイプのヘッドホンならどれでも作業することは可能です。
マイクのセットアップ
録音環境を整えたら、次にマイクをセットアップしましょう。
スタンドにマイクを取り付けたら、ポップフィルターをマイクから約3~5センチ離してセットし、口をポップ フィルターからさらに約2~3センチ離して歌います。
ポップフィルターを取り付けることで「ぱぴぷぺぽ」の破裂音や、「さしすせそ」の歯擦音を低減する効果が期待できます。
マイクの近接効果に注意
SM58のようなダイナミックマイクでは、マイクに近づくほど低音域が増幅される「近接効果」が発生します。
レコーディングにダイナミックマイクを使う場合は、距離によって音質が大きく変化するので、理想の音質になる距離を測ることと、レコーディング中は口とマイクの距離を変えないようにすることが大切です。
マイクヘッドを握り込んだり、口に近づけすぎるとこもりの原因になるので、注意しましょう。
ドライで録音する
実際にボーカルレコーディングをするときには、なるべくドライ(無加工)な状態で収音することをおすすめします。
プリアンプやその他の外部エフェクトを録音中に追加すると、録音後にそれらの効果を取り除くことができないからです。基本的にはドライで録音して、録音後にボーカル用プラグインソフトを使って処理する方がいいです。
コンプレッサーやオートチューン等、どうしても使いたい機器や外部エフェクトがある場合は、かけながら録ることもありますが、特にこだわりが無い場合は後がけの方が不要な手間が省けます。
レコーディング時に役立つヒント
ボーカルレコーディングを開始する準備が整ったので、ここからは実際に歌声を録音するときのいくつかのヒントをご紹介します。
歌ってみた動画のような個人でレコーディングを行う際にも役立つので、是非参考にしてみてください。
1. マイクとの距離
常に良い音質で録音する為には、マイクとの距離が重要です。
マイクとの距離を適切にすることで、最適な音量やトーンバランスを維持しながらレコーディングを進めることができます。
近すぎると、「近距離効果」と呼ばれる近距離による低音のブーストが起こり、遠ざかると音が薄くなりすぎたり、部屋の反響を拾いやすくなります。
ボーカル録音をする際には、適切な距離を保ちながら行うことが大切です。
2. クリッピングをチェックする
ボーカルを録音する前に、インターフェイスのマイク入力チャンネルに注意しながら、曲の最も大きな部分を試しに本番と同じ勢いで歌ってみましょう。
ここで赤色になった場合はクリッピングが発生するので、インターフェイスのゲインを下げる必要があります。
クリップノイズが発生すると後から削除できないので、ヘッドルームを十分に確保したボーカルを録音して、あとからポストゲインでブーストする方がいいです。
3. ノイズに気を付ける
ボーカルレコーディング時には、様々なノイズが発生する可能性があります。
録音環境によって発生する周囲の音。例えば、車の音、空調による空気、PCの動作音といった環境音もマイクに乗りやすいので、対策しておきましょう。
その他にもボーカリストの歌い方による、歯擦音、リップノイズ、ポップノイズのようなノイズも、ポップガードを設置したり、ディエッサー処理をして除去する必要があります。
4. 良いテイクを繋げる
プロフェッショナルなボーカルレコーディングでは「コンピング」と呼ばれるテクニックが使われています。
コンピングとは何回か録ったテイクの中から一番上手くいった部分だけを切り取って、最終的に一つのテイクのように聞かせるテクニックです。
「歌いだしは良かったけど、後半でミスしてしまった…」といった場合でも、とりあえずテイクを残しておけば、あとから切り取って歌いだしだけを使うこともできます。
5. 音程よりも感情
最近では音程を修正するための、ボーカル用のピッチ補正ソフトが多数リリースされています。
ある程度の音程のズレはあとから修正できることを前提としていれば、伸び伸びと歌うことができ、より感情を歌に乗せやすくなります。
6. ハモりをつける
メインボーカルが録れたら、ハモリパートも重ねることで歌にハーモニーを作り、曲に深みと一体感を出すことができます。→ボーカルトラックを重ねて、より豊かなサウンドにする7つの方法
ハモりパートの作り方についてはハモりとは?簡単なハモりパートの作り方でもご紹介しましたが、基本的には3度ハモりというのがよく使われています。
まとめ
ボーカルレコーディングのやり方と綺麗に録るコツについてお話しました。
簡易的な録音環境で自分でレコーディングを行う場合、ボーカルと生ドラムが最もレコーディング難易度の高い楽器であると言われています。
特にボーカルは楽曲の中でも最も前面のセンターに配置され、リスナーから最も注目を浴びる存在なので、たっぷりと時間をかけてレコーディングを行いましょう。
良いボーカルトラックが取得できたらボーカルミックスに移り、より良いサウンドに仕上げましょう。
以上、「ボーカルレコーディングのやり方と綺麗に録るコツ」でした。