【歌を聞きやすく】歌モノ系をミックスする時に気を付けるべき5つのポイント
歌モノ系のミックスの場合は、もちろんボーカルが主役になります。歌モノ系楽曲を制作するときには、ボーカルと伴奏楽器とのバランスのとり方が最も重要な要素となります。
ボーカルトラックを主役としてどれくらい前面に出すのかはジャンルによって異なり、正解はありません。邦楽ではボーカルがハッキリ聞こえるミックスが一般的ですが、洋楽の曲ではボーカルもバックトラックに馴染むようなポジションの曲も多いです。
今回は、歌モノ系トラックをミックスする時に気を付けるべきいくつかのポイントについてご紹介します。
1. ボーカルトラックからミックスする
ミキシングではジャンルごとに重要度の高い楽器から始めることで、全体のバランスを見失うことなくミックスを進めやすくなります。
もちろん歌モノ系であればボーカルトラックが最重要となるので、ボーカルトラックを基準にして他の伴奏楽器の音量バランスを調整していくのがベストです。
例えば、弾き語り系の歌モノであればギターから初めて、ダンスミュージック調であればキックからというようにします。重要な楽器をミックスし終わったら、なるべく後になって微調整したりしないように固定することが大切です。
プロ級のボーカルミックスを手に入れる!素人っぽさを避ける5つのミックステクニック
2. 歌のダイナミクス処理
ボーカルトラックの処理では、歌声のダイナミクス処理が重要となります。ダイナミクスとは簡単に言うと、大きい音と小さい音の差のことです。
ボーカリストによって声の音量にバラつきがあることがあります。大きな声の部分でフェーダーを設定してしまうと、小さい声の部分が聞き取りづらくなってしまいます。そこで、ボーカルの音量の差を表現的に問題ない範囲で均等にする作業が必要になります。
一般的には、ダイナミクスの揃え方には2つの方法があります。1つはコンプレッサーを使って大きな部分を圧縮する方法で、もう1つはボリュームオートメーションを使う方法です。
音質を変化させたくない場合は、ボリュームオートメーションが適していますが、膨大な作業時間を必要とする場合もあります。コンプレッサーは簡単にダイナミクスをコントロールできますが、過度に圧縮しすぎると原音を損なうこともあります。コンプレッサーは製品ごとに音色の個性があるので、状況によって使い分けることをおすすめします。
また、プロのボーカリストの中には、自分でマイクとの距離を調整してダイナミクスをコントロールする方もいます。これも一つのテクニックで、個々のアーティストによって使いやすい方法を見つけると良いですね。
自宅でボーカルレコーディングする時に役立つ6つのヒント
3. ボーカルを前面に出す
歌モノ系ミックスでは、歌声を伴奏楽器に馴染ませながらも、ミックス全体の中で前面に押し出す必要があります。
前面に出す場合でも、まずはフェーダーを使って調節するのが基本で、ボーカルと被る帯域の楽器(たとえばギター、ピアノ、ストリングスなど)の音量を下げることで、ボーカルの存在感を引き立てることができます。それでもボーカルが抜けてこない場合は、EQ(イコライザー)プラグインを駆使してみましょう。
イコライザー(EQ)の使い方を徹底解説【DTM】
歌を前面に出す方法
基本的には、ボーカルの主要な周波数帯域に焦点を当て、その周りの広い範囲を微調整していきます。男性ボーカルなら500Hz前後、女性ボーカルなら800Hz前後から調整していくと良いでしょう。ブーストは2~4dBくらいの範囲で調節して、少しブーストするだけでもかなりボーカルが前に出てくることもあるので慎重に判断しましょう。
EQだけでは足りない場合は、ここでさらにコンプレッサーも活用しましょう。アタックを遅めに30msぐらいに設定して、リリースを300~400msぐらいで、レシオを2~3:1の低めに設定します。これでボーカルが前面に張り付くような感じになります。
ボーカルが綺麗に聴こえない?バンドの中でボーカルが埋もれる時の5つの対処法
4. 倍音を付けて歌声を強化
ボーカルトラックにサチュレーションを使用して倍音を付加することで、アナログ特有の暖かさと、聴覚上のラウドネスを追加し、最終的な仕上がりをよりプロフェッショナルなサウンドにすることができます。
プロの楽曲と比べてなんだか声が弱々しいと感じる方は、サチュレーションを付加することで解決する場合があります。ボーカルトラックに歪みを加える場合は耳で聴いて変化が分からないぐらいにうっすらかけるのがコツです。
ボーカル編集に必須の5つのエフェクトプラグイン
5. EQ処理で整える
EQを使ってボーカルの音質を整えます。マイクの近接効果による過度なローエンドや耳障りな周波数を見つけ出してピンポイントでカットします。※不要な周波数の見つけ方が分からない方は「EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう」を参考にしてみてください。
ボーカルトラックは全体を通して周波数の動きが常に大きく変化しているので、必要な時にだけ動作してくれる「ダイナミックEQ」もかなり効果的なのでオススメです。不要な周波数帯域を取り除いたら、ボーカルキャラクターをより強くするためにボーカリストのおいしい周波数帯域をブーストします。
これは歌い手によって様々なので一概には言えませんが、ハイエンドのプレゼンスをブーストしたり、ローミッドの声の芯をブーストするとパワー感と迫力が増します。
まとめ
歌モノ系のミックスでは、ボーカルと伴奏楽器のバランスが鍵となります。ジャンルやアーティストによって異なるミックスのアプローチがありますが、ダイナミクスの処理、倍音の強化、そして的確なEQ処理が重要です。
基本となるフェーダー操作による音量コントロールから始め、ボーカルトラックを基準にしながら各要素を調整することで、クリアで聴きやすい歌モノのサウンドを実現できます。
以上、「【歌を聞きやすく】歌モノ系をミックスする時に気を付けるべき5つのポイント」でした。