ディストーション(歪み)ギターの音作りに役立つ5つの知識
ロックギターに欠かせない「歪み」サウンドですが、オーバードライブ、ディストーションのようなの歪んだギターの音作りには、ギター、アンプ、エフェクターなどの機材の選択、そしてギタリストの演奏技術など、様々な要素が絡んできます。
歪みギターを上手く聴かせるにはテクニックはもちろんですが、サウンドメイクも非常に重要な要素となります。ジャンルやスタイルに合ったトーンにしなければ、どんなに優れたテクニックを持ったギタリストでも、上手く聴かせることは難しいです。
そこで、今回は歪んだギターの最適なトーンを得る為に必要ないくつかの要素について、詳しく解説していきます。
1. 歪み(オーバードライブ/ディストーション)について
ディストーションのような歪んだトーンを扱う上で、歪み量のコントロールは最も重要な要素の一つとなります。例えば、歪み量を多くすることで、ギターソロに必要なサスティーン(音の伸び)と倍音を付加したり、歪み量を少なくしてカッティングギターのようなダイナミックな演奏も可能になります。
まずは、どのような原理でディストーションのような歪んだ音になっているのかをまずは理解してみましょう。「歪み」を簡単にいうと激しいコンプレッション効果のことで、オーバードライブ、ディストーション、ファズ等の歪み系エフェクターを使用して、音の波形を圧縮することでダイナミクスを無くし、持続的なサウンドになります。
上の図の左側のように、クリーンなサウンドだと最大音量に達したあとに、すぐに音量が減衰していきますが、歪みを加えて圧縮することで、最大音量の持続時間が長くなります。
さらに基音とは別に新しい倍音成分が加わることで、ミドル~ハイの音域がブーストされるので、ギターソロに適した「ジューシー」な音色になります。
歪ませた状態のギターのサウンド周波数を視覚的に見てみると、350Hz辺りに基音があり、700Hz~5kHz辺りがブーストされているのが分かるかと思います。※ただし、歪ませすぎると基音以上に倍音が膨れ上がりすぎて、ペラペラしたいわゆる「芯の無い音」になってしまうので注意が必要です。
歪みトーンを作る場合は、この2つのサスティーンと倍音成分を確認しながら、最適な歪み量を決めることが非常に重要です。
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2. コンプレッサーによる圧縮効果
では、歪ませることによるサスティーンと音の厚みは欲しいけど、音質をなるべく変えたくないという場合はどうすればいいのか?そこで役立つのが「コンプレッサー」エフェクターです。
コンプレッサーは、原理的にはディストーションと同じ「圧縮」によるものですが、より優しく音を潰してくれるので、トーンの変化が少ない緩やかな圧縮効果を得ることができます。クリーンや軽いクランチくらいのトーンが欲しい場合に特に有効で、音のダイナミクスを抑えることもできるので、安定した音量感を得る目的で使用することもあります。
かけすぎると音の立ち上がり部分が抑えられてしまって、こもったようなモコモコとしたトーンになる可能性があるので、注意しましょう。
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3. 歪みを増やすと倍音が増える
ディストーションをかけると倍音が増えます。これは歪みトーンを理解する上で非常に重要なポイントとなります。倍音とは何かについて簡単に説明します。
ギターの弦を弾くと、基音と呼ばれる基本となる音程の他に、その整数倍の周波数を持つ倍音が同時に発生します。例えば、Aの音(440Hz)を弾くと、880Hz、1320Hz、1760Hz…といった倍音が含まれています。これらの倍音の構成によって、音色が変化し「明るい」「暗い」「温かい」「冷たい」といったような印象を受けます。
ディストーションは、この倍音成分を複雑に変化させることで、独特の歪みサウンドを作り出します。具体的には、以下の2つの作用があります。
- 倍音の強調 : ディストーションは、もともと含まれている倍音成分を持ち上げる効果があります。倍音が強調されることで、音が明るく、攻撃的なサウンドになります。
- 新しい倍音の生成 : ディストーションは、元の音には存在しなかった倍音を新しく生みだします。これにより、音色がより複雑になり、奥深さのある豊かなトーンになります。
ディストーションの種類や製品ごとに倍音の構成は違うので、まったく同じギターやアンプを使っても、ディストーションの種類を変えるだけで、全く異なるサウンドに聴こえます。
4. イコライジングで整える
アンプヘッドのBass、Middle、Trebleのつまみやイコライザーエフェクターを使って音質を整えることをイコライジングと言います。倍音が膨れ上がったディストーションサウンドを演奏スタイルや環境に合わせてさらに磨き上げていきます。
例えば、バンドアンサンブルのような他の楽器も一緒になっているような状況では、ベースと被りやすい低音域をカットしたり、倍音が増えたことでボーカルの邪魔をしやすいので、中音~高音にかけてカットするといったような使い方があります。
トーンコントロールのつまみによる音質の変化は以下のようなイメージです。
- PRESENCE
超高音 : 最終的な高音部分のニュアンス。エアー感や煌びやかさに影響。 - TREBLE
高音 : ジャキジャキとしたエッジ感。カットしすぎるとこもります。 - MIDDLE
中音 : 一番おいしい部分。ボーカルや他の楽器にとっても重要な周波数。 - LOW
低音 : コシのあるサウンドに。ブリッジミュートのズンズンした部分。 - RESONANCE
超低音 : ベースの領域と被るのでアンサンブルで使用することは少ない。
ロックで使われるディストーションギターでは、中音を広くカットすることで相対的にハイとローがブーストされた「ドンシャリ」と呼ばれるサウンドが好まれる傾向があります。
歪ませることで音の密度が増え、レンジも広くなるので他の楽器に干渉しやすくなります。特にボーカルとの被りを回避することは大切で、ドンシャリ傾向にすることで歌との音被りを回避しながらも、伴奏に必要な周波数帯域が持ち上がってくるので便利です。
5. 空間系エフェクトで馴染ませる
ディストーションギターにリバーブやディレイのような空間系のエフェクターをかけることで、大きな会場で演奏しているかのような壮大な空間表現が可能になります。また、音を奥に引っ込める効果もあるので、リードギターやギターソロの場合にはオケに馴染ませる効果も期待できます。
心地良いのでついかけすぎてしまいがちですが、やりすぎるとお風呂場のように音の輪郭が無くなったり、リバーブ音が他の楽器に干渉してしまうこともあるので注意が必要です。
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まとめ
今回ご紹介した内容を理解して組み合わせることで、自分の理想とするディストーションサウンドを作り出すことができるでしょう。
歪みギターの音作りは、奥が深く、ある程度の経験も必要にはなってきますが、色々な機材やセッティングを試して、自分だけのサウンドを探求してみてください。
以上、「ディストーション(歪み)ギターの音作りに役立つ5つの知識」でした。
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