宅録で使える!迫力のあるエレキギターサウンドを作る10のテクニック
エレキギターは、ロック、ポップス、EDMなど、幅広いジャンルの楽曲制作で欠かせない楽器の一つです。そのため、迫力のあるエレキギターサウンドを生み出すミキシングスキルは、音楽制作において非常に重要となります。
とはいえ、「自分で録音したエレキギター音がなんか物足りない…」そう感じることはありませんか?プロが作ったような迫力のあるギターサウンドは高価な機材や防音スタジオがないと無理…。そんなことはありません!
実は宅録のような環境でも、ちょっとした工夫とテクニックで、驚くほど音が変わるんです。そこで今回は、宅録で使える迫力のあるギターサウンドを作る為のいくつかのテクニックをご紹介します。
1. ダブリング
同じギタートラックを2テイク録音する方法です。バッキングギターやリードギター、ギターソロ等、色んな場面でギターの音圧アップに使用できます。
よりミックス全体で分離感を出したい場合には、音質を多少変えて(片方はローミッドが豊富な音質、もう片方はハイミッド寄りといったような感じで)録音することで、ギター2本の住み分けと、音の干渉によるフランジャーのような「シュワーン」とした感じを軽減することができます。
→エレキギターミキシング上達の5つのテクニック
2. パンを左右に振る
ダブリングした2本のギタートラックの片方を左90、もう片方を右90くらいにパンニングします。こうすることで音像が横に広がり、ステレオ空間の中を広く使ったバッキングトラックを入手することができます。→ミキシングの3大要素【音量・定位・音質】について
※片方をコピペして反対側に振っても、センターに配置されたモノラルサウンドになるので注意です。もしバッキングデータが1つしか手元にない場合は、タイミングを少しズラすか、どちらかのピッチを微妙にズラす事でもステレオ効果を演出できますが、2テイク録ったほうがクオリティは高いです。
音像を最大まで広げる為に左右100に振るエンジニアの方も多いとは思いますが、イヤホンやヘッドホンで聴いたときに「片耳モノラルサウンド」といって自然界には存在しない不自然なサウンドになるので(実世界では右から音が鳴っていたとしても、左耳にも多少音が入ってきます。)よりリアルなミックスにしたい場合は100より少し戻した数値をおすすめします。
3. バストラックにまとめる
2本を一つのミキサートラックにまとめます。バストラックを活用することで、まとめて処理することができるようになり、個別に処理するよりもエフェクトインサートの数が減ることによるCPUの節約効果と、サウンドに統一感が生まれます。
左右に違う音質のバッキングトラックを録音している場合には、個別に処理した方が良い場合もあるので、状況に合わせて処理方法を変更します。
4. EQを使ってローカット
エレキギターがこもって聴こえたり、アンサンブルの中で抜けてこない…と感じる場合は、不要な低音を処理せずにミックスしていることが原因であることが多いです。
エレキギターの場合、100Hz以下に不要な低音が含まれているのでEQ(イコライザー)のハイパスフィルターを使用してカットします。100Hz周辺で左右に動かしていると急にスッキリするポイントがあるので、耳を使って必ず確認するようにします。→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
ギターを単体のみで使用するような状況では必ず行うべき処理ではないですが、バンドアンサンブルのような他の楽器も重なってくる場合は、低音をカットした方が全体で迫力あるギタートーンが手に入ります。
5. コンプで圧縮
手前に張り付くような迫力のあるギタートーンにしたい場合は、コンプレッサーを使ってダイナミクスレンジを圧縮するのが非常に効果的です。ダイナミクスレンジとは大きい音と小さい音との差のことで、エレキギターは人が演奏する楽器なので、音量の振り幅が大きくなりがちです。
特に歪み量の少ないクリーンギターや、オーバードライブぐらいの軽い歪みで演奏する場合は、大きい音をコンプレッサーで圧縮することで、音量に均一に保つことができます。
もちろんコンプレッサーを使った圧縮はデメリットも多いので、トラックに対して圧縮が必要かどうかは、エレキギターの役割を考えて慎重に判断する必要があります。
ちなみに激しく歪んだディストーションやファズのようなギターは、歪み自体が激しいコンプレッションによるものなので、さらに圧縮すると多くのトランジェント(エッジ感)が失われて、のべっとしたサウンドになってしまう可能性があります。
→コンプレッサーの基本的な使い方
6. 音質を整える
状況に応じてEQを使ってさらにサウンドを整えます。元々のギターの音質は、他の楽器との兼ね合いでEQの設定値は変化するので、一概には言えませんが
- ボーカルがいる場合は300~2kHz周辺をカットすることで、歌の為のスペースを確保。
- バンドアンサンブルの場合、3~5kHz辺りはギターが独占できる音域なので、他の楽器への干渉を最小限にしてブースト。
- 歪ませたギタートーンは2~4kHz辺りに耳に突き刺さるような高音が出ていることが多いのでノッチ処理でスッキリ。
これらは、一般的なエレキギターのEQ処理としてよく使用されている方法です。あくまで参考程度にしながら、他の楽器とのバランスを考えて適切な処理を施しましょう。
7. サチュレーションをかける
すでに歪ませているエレキギターであっても、サチュレーションによって倍音成分を付与することでよりパンチのあるサウンドに仕上げることができます。
サチュレーションはドライブ系エフェクターと動作原理は同じですが、元の信号に別の種類の倍音を加えることで、音に厚みや暖かみを付加する効果があります。これによって、ギターサウンドが埋もれにくくなり、迫力や奥行き感を与えることができます。
サチュレーションは、ある程度のコンプレッション効果も持ち合わせていることに注意しましょう。すでにコンプで圧縮している場合、過度な圧縮になりすぎないように両方のバランスをみながら調整します。
8. ハイミッドの重要性
ロックサウンドにおけるエレキギターは2k~5kHz周辺のハイミッドの音域が重要なポイントになってきます。バンド編成の場合は低域はベースがいて、中域にはボーカル、高域にはドラムの金物やシンセサイザーなど、実際には多くの楽器に占領されているので、使える音域は限られています。
混在したミックスの中で、唯一ギターの一番おいしい部分を最も強調できるのが、 2k~5kHz周辺の周波数帯域になるという訳です。
ただし、このハイミッドブーストが必要かどうかもギター本来のトーン(もとから2kHz周辺が強く出ている)や他の楽器との兼ね合いが関わってくるので、必ずブーストするのが正解というわけではありません。
特に、2kHz周辺は人の耳が一番認知しやすい音域なので、ブーストしすぎると非常に耳障りな音質になってしまうこともあるので慎重に行いましょう。
→バッキングギター 5つのミキシングテクニック
9. ディレイで壮大に
良質なリードトーン作成のために空間系エフェクトは重要な要素です。ディレイはやまびこのように音の反響を付与するエフェクトで、リードギターに残響効果を付与することで、寂しくなりがちな単音フレーズでも、大ホールで演奏しているかのような壮大さを与えることが可能です。
ディレイエフェクトの基礎 | サウンドを強化する為の強力なツール
一言でディレイといっても、付点8分ディレイ、ピンポンディレイ、ショートディレイ等、色んなディレイテクニックが存在するので、どういった残響効果が欲しいのかを考慮しながら最適な設定にすることが重要です。
10. うっすらリバーブ
リバーブはディレイと同じく空間系エフェクトの一つで、特定の空間の音の跳ね返りを再現することができます。空間反響の無い音は先述の「片耳モノラルサウンド」と同じく、自然界に存在しない音なので少し不自然に聴こえてしまいます。
手前に張り付くようなバッキングトラックが欲しい場合や、バンドアンサンブルに混ざっている場合は、深くかけすぎると逆効果になることもあるので、注意が必要です。
→ギターリバーブで壮大なミックスを手に入れる方法
まとめ
今回は、宅録で迫力のあるエレキギターサウンドを作るための10個のテクニックをご紹介しました。
ダブリングやパンニングで音に広がりを持たせ、EQやコンプレッサーで音質を整え、サチュレーションやディレイで音に厚みや奥行きを加えることで、プロフェッショナルなサウンドに近づけることができます。もちろん、今回ご紹介したテクニックはあくまで基本的なものであり、音楽のジャンルや楽曲の構成によって最適な方法は異なります。
ぜひ、これらのテクニックを参考に、自分だけの最高のギターサウンドを追求してみてください。
以上、「宅録で使える!迫力のあるエレキギターサウンドを作る10のテクニック」でした。