自宅でベースを綺麗にライン録音する為の10ステップ
スタジオを利用してベースアンプの音をマイキングするのは良い選択ですが、DTMのようなデジタル環境での制作や、レコーディングにかかる予算をなるべく少なくしたいミュージシャンにとっては常に採用できる方法とは限りません。
自宅であってもライン録音されたクリーンなオーディオデータをパワフルでパンチのあるサウンドに変えるためのツールは豊富に用意されています。
今回はベースのライン録音における、録音レベル、オーディオのクリーンアップ、EQ、コンプレッサー、濁りを低減する方法についてお話します。
※レコーディングの準備についてはエレキベース録音の為の7つのヒントでも紹介しているので、あわせてご覧ください。
自宅レコーディングで必要なもの
自宅でベースをライン録音する場合は、ベース本体とシールド以外にもオーディオインターフェイスとアンプシミュレーターが必要になります。
オーディオインターフェイスを使用してデジタル録音するメリットは多く、マイクで収音する場合のように周囲の環境音や録音スペースを気にする必要がありません。また、ミステイクの修正やトーンを後から差し替える「リアンプ」もワンクリックで行えたりと、利便性が格段に向上します。
アンプシミュレーターはアンプ、キャビネット、エフェクター等の機器がデジタルシミュレートされたソフトウェアで1台あれば何百種類もの機材を自由に選んで使用することができます。アンプのキャビネットの組み合わせや、エフェクターの繋ぎ順も好きに入れ替えることができるので非常に便利です。
1. DAWに録音する
ほぼすべての主要なDAW(音楽制作ソフト)には録音機能が備わっているため、録音の準備ができたら、まずは入力されている音声をモニターして、ベースが正しく鳴っていることを確認します。
この時に聴こえてくるサウンドは、レコーディング中にどのように鳴っているのかとまったく同じになります。
2. ゲインレベルのチェック
オーディオインターフェイスのゲインレベルをチェックして、ベース信号が歪んでいないことを確認します。レコーディングにはクリアなサウンドが必要です。この段階でノイズ等が乗っていると非常に不利になってしまいます。
仮のテスト録音をしてみて、オーディオ信号が小さすぎず、反対に大きくなりすぎないように最適な音量で入力されているかを確認します。
3. 実際に録音してみる
ラインレコーディングの準備が整ったら、実際に録音するフレーズをワンテイク録ってみることをおすすめします。
急にハイフレットに飛んだり、スラップのような奏法では突発的に大きな音が出ることもあります。録音中の波形を確認して、入力信号に問題がないかを確認します。
4. コンピング
コンピングは複数のテイクの中から最高テイクのみを切り取り、それらをつなぎ合わせることで「完璧なテイク」を作成するテクニックです。
すべての最良のテイクを選んだら複数のセクションをまとめてコンプしたり、波形編集、カットした場所のフェード、ミスの除去、音量の大きい部分や小さな部分がある場合はボリュームオートメーションで波形のバランス調整を行います。
5. EQで整える
ベースの波形編集が終わったら、次にEQを使って音質を整えます。
ベースの場合、焦点を当てる帯域は約50~500Hzであり、ベースのトーンキャラクターによってその中でも重要な帯域は変わってきます。
最適な処理は音楽のジャンルや奏法スタイルによって変化しますが、キックとの音の住み分けや、ギターやシンセサイザーと競合し合うローミッド部分の処理は非常に重要です。
→イコライザー(EQ)の使い方を徹底解説【DTM】
6. リミッティング
ベースの場合はダイナミクス(大きい音と小さい音の差)が少なく、常に安定したボリューム感であることが重要です。
その為、コンプレッサーやリミッターを使って、波形の波をなるべく均一化することで、常に一貫した低音を供給し、トラック全体をどっしりと支える役割を果たします。
あまりに多きな音量差の場合は、録音しなおすか、圧縮よりもボリュームオートメーションでダイナミクス処理したほうが綺麗なサウンドが得られます。
7. レイヤーを試してみる
ベーストラックは複数のサウンドを重ねる「レイヤー」を採用することがよくあります。
例えば、スタジオでレコーディングしている場合は、マイク収音だけでなく、アンプからのクリーンなデジタルライン入力も録音して、その両方を混ぜることがよくあります。
ライン入力のみの場合は、ベーストラックを複製して、片方のトラックで中音域やピックのアタック感を追加することでアナログ感を演出できます。
マスキングを回避するために、中音域を担当するトラックにローカットをかけることを忘れないようにしましょう。
8. サチュレーション
ベースミックスではサチュレーションやドライブ系エフェクトが非常に効果的です。
サチュレーションで適度に倍音を追加することで音を厚くし、特にライン入力の場合はデジタルに足りない「暖かさ」加えることができます。
自然とローミッドが膨れ上がることで、耳で聴き取りやすい音域がブーストされるので、複数の楽器が鳴っている状況でもベースが埋もれるのを防ぐ効果もあります。
9. バスコンプ
各トラックのベース処理を終えたら、1つのトラックにまとめてバスコンプを適用することで、複数のベースを「ならす」効果があります。
特に複数レイヤーしている場合は低めのレシオ値で、軽く圧縮を加えることで統一感が生まれるのでおすすめです。
10. モノラルで確認する
すべてのベースミックスを終えたら、最後にトラック全体を「モノラル」にして確認してみましょう。
特にロックジャンルではベースをセンターに、ギターを左右100に振っていることも多い為、ステレオ環境だと分離しているように聞こえても、モノラルにすると中低音域でぶつかり合っている可能性があります。
すべてのトラックの最終的な音量感の確認にも「モノラルミックス」は非常に効果的です。
まとめ
自宅でベースを綺麗にライン録音する為の10ステップについてお話しました。
- DAWに録音する
- ゲインレベルのチェック
- 実際に録音してみる
- コンピング
- EQで整える
- リミッティング
- レイヤーを試してみる
- サチュレーション
- バスコンプ
- モノラルで確認する
最近ではオーディオ機器の進歩もあり、オーディオインターフェイスを介したライン録音のみを使って音楽制作を行うプロデューサーも多くなりました。
アンプシミュレーターの扱いや、ライン入力に足りないエアー感やアナログの質感を付与することも重要になってきますので、今回の内容を参考にして最高のベーストラックを入手しましょう。
以上、「自宅でベースを綺麗にライン録音する為の10ステップ」でした。