キックドラムにパンチを加える音作り【ミキシングテクニック】
今回はDTM初心者の方に向けて、パンチのあるキックドラムの作り方について説明します。
キックドラムは海外のダンスミュージックやヒップホップといったジャンルにおいては、ボーカルと同じくらい重要な役割を担う為、たっぷりと時間をかけて優先的に音作りする必要があります。
そこで今回は、キックドラムに存在感とパンチを加える為のミキシングテクニックをご紹介します。※最後にこの記事の内容に沿った解説動画を添付しておりますので、そちらも合わせてご覧ください。
1.良質なキックサンプル選び
ミキシングに移る前に、そもそもの元となるキックサンプル選びの段階で、最終的なキック品質の7割くらいは決定していると言っても過言ではありません。
音楽ジャンルや楽曲雰囲気にあった最適なキックドラムを選び、必要に応じてチューニングを施すこともあります。素材が良くないと、どれだけ加工しようと質の良いキックに仕上げることは難しいです。
キックに存在感を持たせるには、まずは高品質なキックサンプルを入手することから初めてみましょう。
現在多くのサンプル音源販売サイトが存在し、海外の有名所だと 「Loopmasters」や 「Splice」がクオリティが高く種類も豊富なのでオススメです。
2.複数のキックをレイヤーする
キックを強化する方法として「レイヤー」と呼ばれる複数のキックドラムを重ねるやり方があります。
例えば、 「低音は効いてるけど、ちょっとこもってる感じが・・・」
「アタック感があるけど、ちょっと低音がスカスカだなぁ・・・」
とか感じることがあると思います。
そういった場合には、その2つを組み合わせることで、理想のサウンドに近づけることができます。
具体的な方法としてはイコライザー(EQ)を使って帯域を分離してから重ね合わせることで、よりクリアで解像度の高いサウンドに仕上がります。
簡単に見えますが、実際にはとても難しい作業です。キックの組み合わせやどこの周波数でどれくらいの幅で重ね合わせるのかとか、非常にセンスが問われる部分です。
二つを重ね合わせたKickがこちら
まだ良い音とは言えないので、更に加工していきます。
3. 位相合わせ
複数のサンプル音源や複数のマイクで録音されたキックドラムを使用している場合は、他の処理を行う前に位相の確認を行う必要があります。
位相とは2つの音源ソース間の時間と振幅の差です。音の波はすべて正と負の波の動きで構成されており、DAWを使って拡大することで確認することができます。
サウンドが異なるタイミングで鳴ることで、上向きと下向きの波形がぶつかり合うことで位相の問題が発生し、エネルギーを奪ったり、音の質感が変わってしまう能性があります。
解決方法としては、波形を動かして向きを揃えるか、片方のトラックを位相反転させることでほとんど解決するので試してみましょう。
4. チューニング
必要に応じてキックの音程を楽曲のキーに合わせることで、他の楽器とのなじみが良くなります。
すべてのキックに対して有効というわけではありませんが、低音の伸びが良いキックドラムや、レイヤーしていない独立したキックに対して最も効果的です。
やり方は、純粋に耳で聞いてピッチを合わせるのでもいいですし、各種チューナーで音程を計ってから合わせる方法が確実です。
個人的にはFL Studio標準の「Edison」内のサンプルの音程を計る機能が便利なのでよく使っています。
音程の変更方法はDAW付属のサンプラーにピッチ変更のつまみが付いているかと思うので、そちらを使用しています。
DAWごとに音程を計るツールと変更するツールが備わっているかと思うので、キックがどの音を鳴らしているのかを判定して、楽曲のキーに合わせます。
※キーの見つけ方はキーの正しい決め方【作曲に役立つ音楽理論】を合わせてご覧ください。
5. イコライジング
EQプラグインを使って不要な帯域を削ったり、逆に目立たせたい音をブーストします。
すべてのキックドラムに当てはまるわけではありませんが、一般的に30Hz以下の低音や500Hz周辺に不要な音が含まれている場合が多いです。
画像のオレンジ丸の部分は必要ないのでEQを使ってカット方向へ修正します。
必要に応じてキックのおいしい帯域をブーストします。
※EQを使ったブーストはリスクがあります、初心者の方はカットを意識して使用した方が結果的に良くなりやすいので、必ず耳で聴いて判断するようにしましょう。
恐らく最終的にこんな感じのEQカーブになると思います。
一概には言えないので参考程度に。
6. コンプレッション
続いてコンプレッサープラグインを使用して音を潰していきます。
特に生のドラムパーツを扱っている場合には、ダイナミクス(音量の大小)にバラつきがあるかと思うので、ミックスの中に埋もれたり、部分的に飛び出している可能性が高いので、コンプレッサーによる圧縮が非常に効果的です。
その他にもボディを圧縮して、ビーターアタックによるトランジェントを強調することで、よりパンチのあるキックサウンドにしたりと、さまざまな使い方ができます。
※コンプレッサーの詳しい使い方はこちらのコンプレッサーの基本的な使い方の記事をご覧ください。
↑これが元のキック波形です。
- RATIO 4:1
- Attack 5.00ms
- Release 150.00ms
- Gain Reduction -5db
で処理しました。
イコライザーと同じように、最適なコンプレッションの数値はキックの音質、求めるサウンドによって変わってくるので、あくまで参考程度にお願いします。
※コンプ処理に関しては、サンプルによっては既にコンプ処理済みのものも多いですので潰しすぎにはご注意ください。
7.サチュレーション
サチュレーションとは、トラックに対して歪みによる倍音を付与することです
ギターやベースにかけるイメージが強いですが、キックが主体となる音楽ジャンルでは、キックを強化するために歪みが加えられています。
キックにかける場合は歪んでるのがわからないぐらいうっすらで大丈夫です。(意図的に激しく歪ませることもあります。)
倍音を付加することで簡単にパンチが加わるので、おすすめの強化方法の一つです。
FL Studioであれば標準のコンプレッサープラグインにサチュレーション機能が備わってます。
純正のプラグインであればSoft Clipperや
外部ソフトウェアでお探しの場合は【2022年最新】高品質のサチュレーションプラグインおすすめ5選を合わせてご覧ください。
8. リバーブ
リバーブもサチュレーション同様にうっすらで大丈夫です。
自然界で反響のない音というのは存在しないので、リバーブをまったくかけていない状態だと機械的で不自然に感じてしまいます。
キックにかけるリバーブの設定値は以下の通りです。
- Decayをかなり短めに0.5~1.0sec
- Early Reflection(音が反射してくる最初の音)を大きめ
- ローカット100~200hz(胴鳴り(低音)部分にかけるとモコモコします)
まとめ
キックドラムにパンチを加える音作りについてご紹介しました。
実際にはキック本来のサウンドと、どのような音にしたいのか、他の楽器とのバランスをみながら更に微調整を加えていきます。
今回の処理で出来上がったキックドラムがこちらです
もちろんミキシングに正解というものはなく、人によって処理の仕方はさまざまです。 始めはトライアンドエラーを繰り返して、オリジナルサウンドを作り上げてください。
動画でも今回の内容の説明をしているのでもっと詳しく知りたい方は、是非ご覧ください。